侍ジャパン早川隆久投手(25)が「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」1次リーグ第3戦オーストラリア戦に先発し、5回を完璧に抑えた。楽天から唯一代表入りの左腕が、既に進出が決まっていた決勝に向け弾みを付けた。打線は13安打10得点の8回コールド勝ち。投手陣は3試合でわずか1失点と、投打に強さを見せ1次リーグを3戦全勝で終えた。決勝の相手は韓国に決定。井端弘和監督(48)は初指揮となった大会で全勝優勝に王手をかけた。

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左腕の生命線クロスファイアで締めた。5回2死走者なし。早川はオーストラリアのスミスを2球で追い込むと、146キロで懐を突いた。7つめの三振を見逃しで奪い、5回パーフェクト。投球中はほとんど変えない表情が、ようやく緩む。ただ、試合後は「結果的に良かったと思いますけど、内容は自分の中で突き詰めていければ。コースに投げきれなかったボールもあった」とストイックな、いつもの姿だった。

高校、大学でも代表入り。アマ球界のど真ん中を歩いてきたが、プロでは初めてジャパンのユニホームに袖を通した。初回は「緊張しました」。先頭スペンスに11球、粘られた。「四球を出したら嫌な流れになる」ところ、左飛で踏ん張った。2回からチェンジアップを修正。普段は組まない古賀と息を合わせ、5三振は3球で奪った。右打者の外からもカットを入れ「普段はやらない配球。引き出しが増えた」と喜んだ。

新たな糧は宮崎キャンプから得ていた。桐敷、根本ら他球団の左腕と積極的に交流。年長の自分から投球時の意識を尋ねたり、逆に感じたことを伝えたり。「ウィンウィンの関係になってるのかな」。代表ならではの時間を生かしたが、同時に別の感情も湧き上がった。「他球団は若手がたくさん出てきている。自チームは自分1人しか選ばれなかった。楽天は若手が出てこないといけない」。台頭の旗頭に-。使命感を得た。

早大時代は大学代表で明大・森下(現広島)に投手の心構えを習い、一回り大きくなれた。今回も「来シーズン、この経験を生かして、楽天の中で引っ張っていける存在になれれば」と誓った。3年で計20勝を挙げたが、本来の力からすれば、もっと勝っていい。代表経験を来季につなげる。それは井端監督の願いでもある。今回の侍ジャパンの存在意義を、結果で証明する。【古川真弥】

 

▼先発早川が5回を無走者に抑えた。過去の日本代表では19年プレミア12の高橋礼が、プエルトリコ戦で6回2死まで打者17人を完全に抑えている。高橋礼の5回2/3無走者は、プロが参加した五輪、WBC、プレミア12の3大会に限ると日本代表の最長記録。15年プレミア12では大谷翔平が準決勝の韓国戦で6回まで無安打(1死球)。日米野球では14年に則本昂大が5回を完全に抑え、西-牧田-西野との4人継投でノーヒットノーランを記録。今大会では古林叡煬(台湾)が日本戦で6回1死まで完全投球を見せている。