打球の角度、ええよ-。阪神高卒3年目の前川右京外野手(20)が1軍沖縄宜野座キャンプ第1クール最終日となった4日、「アーチスト」への変身を印象づけた。佐藤輝と参加したランチ特打では67スイングで柵越え27本。岡田彰布監督(66)から飛球の質の変化を絶賛され、激しさが増す外野両翼レギュラー争いの中で好位置につけた。

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佐藤輝から前川へ、拍手の宛先が自然と移った。気温24℃の日差しに照らされながらのランチ特打。大方の注目を集めた背番号8の横で、背番号58の20歳が大きな弧をかけ続ける。終盤には後輩が主役の座を完全に奪い取り、柵越えの度に拍手喝采だ。

「感触はだいぶいい感じ。角度も自然に上がるようになってきている」

特打では67スイングで柵越え27本。右翼席上部に張られたネットを越える大飛球も13本を数えた。5連発あり、最長飛距離130メートル弾もあり。何より昨季までラインドライブ気味だった飛球の大半がこの日、高々と弧を描いていた。

「下半身の入れ方とか、結構トレーニングさせてもらったんで。前はトップの位置から力んでいたけど、今はインパクト集中ぐらいの感じでいけています」

今オフ、三重県津市の「みどりクリニック」で打撃フォームを解析。スイング中に下半身が浮き上がり、パワーが伝わりきっていないと指摘された。軸足でもある左足の小指側に置かれていた重心を、母指球付近に修正。下半身のパワーをそのままボールにぶつけられるようになった。力みがちだった悪癖も「絶対ほんまに『力なし』と言い聞かせながら打っています」。結果、打球に角度がつき始めたのだという。

有望株の進化に、岡田監督もニンマリだ。「だいぶボールが上がるようになってきたよな。抑え込むようなバッティングやったけど、スムーズにレベルで打ったらボールが上がるようになってきたんやろな」。森下、ノイジーらとの外野両翼争いの中でも「今の状態やったら前川とか野口の方がいいもんな。まだまだ決める段階じゃないけど、レベルの高い争いしてるんちゃうかな」と高評価した。

とはいえ、今は焦りを極力排除する。昨季は春季キャンプイン直前に左上肢コンディショニング不良を訴えた。交流戦でプチブレークした後の8月にも体調不良で戦線離脱した。もう同じ轍(てつ)は踏まない。

「アピールっていうのはちょっと捨てています。アピールしないといけない気持ちはあるけど、それを言っていたら変な方向に転がるかもしれないので」

プロ初アーチ、レギュラー奪取へ。力まず、地に足をつけて、ゆったり弧を描き続ける。【佐井陽介】