<ソフトバンク0-0西武>◇31日◇福岡ヤフードーム

 負けない西武が優勝マジックを19に減らした。ソフトバンク戦(福岡ヤフードーム)は延長12回、スコアレスドローに終わった。29日から3試合連続で引き分け。同一カード3連戦すべて延長戦での引き分けは、史上初という死闘だった。先発の岸孝之投手(23)が9回を171球の熱投。救援陣も粘り、3日で13時間32分の戦いに白黒はつかなくても、2位ソフトバンクとの直接対決でマジックを3つ減らした西武がリーグ制覇への勢いを加速させる。

 西武の5番手小野寺が最後のバッター大村を左飛に打ち取ると、渡辺監督はベンチから手をたたいて出てきた。列をつくってナインを出迎える。結果は引き分けでも、それは明らかな勝利の儀式だった。もう負けられない状況にあった2位ソフトバンクのベンチは落胆。どちらが勝者かを、明確に物語っていた。

 「初めてじゃないかと思ったよ。すごいね」。史上初の同一カード3試合連続延長引き分けを、渡辺監督は興奮気味に振り返った。4時間29分のスコアレスドロー。3日間で延長12回を3試合、合計13時間32分を戦い抜いた。白黒はつかなくても、優勝マジックは確実に1つずつ減って19に。「みんな力を出して、よくやってくれた」と死力を尽くしたナインをねぎらった。負けなかったことに価値があった。

 先発岸が力投した。1点もやれないプレッシャーの中、7回と9回の満塁ピンチでは、いずれも4番小久保をスライダーで二飛、遊ゴロに打ち取った。気が付けば、171球を数えていた。「そんなに投げたんですか?

 大学4年の時以来です。負けなくて良かった。疲れは相当来たッス」と笑った。9回を6安打無失点。勝ちはつかなくても心地よい達成感があった。

 前回登板で右股(こ)関節を痛めた影響が心配されたが、続投には渡辺監督のメッセージが込められていた。「月間MVPがかかっていたし、1点入るまでは代えないと思っていた。今月は文句なしの内容。同じ月間3勝でもイニング数は(ライバルの)岩隈より上だし、これで岸がとれなかったら選考委員が悪いよね」と後押しした。2年目右腕に自信をつけさせたいという親心だった。

 五輪組不在で正念場だった8月を12勝7敗3分け、貯金5で終えた。死球で右肩を痛めたブラゼル、右足首の古傷を痛めこの日出場選手登録を抹消された後藤など故障者が相次ぐが、総力戦で粘った。負けない西武が、4年ぶりリーグ優勝へ1歩ずつ近づいている。【柴田猛夫】