<中日4-3広島>◇7日◇ナゴヤドーム

 今季限りの現役引退を決めている中日立浪和義内野手(39)が、06年10月以来2年7カ月ぶりのサヨナラ打で接戦にケリをつけた。球団最多、史上6位タイとなる13本目のサヨナラ打。3-3の9回裏2死一、三塁で代打で登場。広島3番手梅津のストレートを中越えにはじき返した。チームは2カード連続勝ち越しとし、借金1で3位浮上。上昇ムードで8日、首位巨人の待つ東京ドームに乗り込む。

 打球の行方を見つめ、必死に祈った。バックする赤松のグラブの先で打球が弾むのを見届けると、喜びいっぱいでガッツポーズ。二塁ベースを回ると、ベンチから飛び出してきたチームメートにもみくちゃにされ、谷繁に担ぎ上げられて、再び力強く拳を天に突き上げた。代打立浪がセンターオーバーのサヨナラ打。球団最多13本目となる殊勲打の感触が両手に残る。ドームの真ん中で聞くスタンドからの大歓声が、何とも心地よかった。

 「いいところでチャンスを作ってくれたんで、本当にうれしい。(立浪コールを聞いて)いつもは力んでしまうが、きょうは平常心でいい感じで立てたので、絶対に打てると思っていた。打った瞬間はどうかなと思ったけど、抜けてくれと叫びながら走りました」

 2死から野本が三塁打を放ち、井端が四球を選んで回ってきた出番。カウント0-2から1球スライダーを見逃し、外角高めに来た梅津のシュートを思い切りたたいた。「野本が打って、もしかして小池のところで回ってくるんじゃないかと思っていた。次の森野も左だし、きょうは打っていたので、自分で勝負だと思った」。迷いのない積極的なスイングで、白星をつかみ取った。

 前日の悔しさを生かした。6日の広島戦。8回無死一、三塁のチャンスで代打で登場するも、横山の直球に空振り三振に倒れていた。「大事にいきすぎて、絶好球で三振した。終わってから反省しました。今日は好球必打で打ちにいったのがよかった」。反省がすぐに結果につながり、自然と笑みが弾けた。これで今季は14打数5安打、打率は3割5分7厘。2割5厘に終わった昨年の悔しさを存分に晴らす活躍だ。

 この日も、連日指導する野本らの早出特打に付き合うため、午後1時前にドーム入り。選手と打撃コーチの二足のわらじにも、辛さを決して口に出すことはない。そして最高の結末に、指揮官も「こういう試合は選手に聞いて」と、打った立浪をたたえた。

 「なかなかこういう機会もないが、1本でも打てるように頑張りたい。昨年ダメだった分、今年はしっかり準備して、出番を待っていきたい」。まだシーズンは始まったばかり。立浪のラストイヤーはこれから先もまだまだ輝き続ける。【福岡吉央】

 [2009年5月8日10時30分

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