粘り強く耐えた阪神下柳剛投手(41)が、登板3戦目にしてプロ20年目を迎える今季初白星を手にした。「打線サマサマです。初勝利?

 そらうれしいよ」。普段は寡黙な男が、喜びを口にした。

 ギリギリでせき止めた。5-3の5回、2死までこぎつけながら走者一、二塁と1発が出れば逆転の場面。勝利投手の権利を目前に、ヤマ場が訪れた。打席には代打畠山。際どいコースを狙い続け、フルカウントになった。勝負球は外角120キロのシュート。バットに差し込んだ瞬間、アウトを確信した。右翼桜井ががっちり捕球。球数は今季最多の98球に達していた。

 苦しい投球だった。5回まで毎回安打され、8安打3失点。ヤクルトの各打者は、内角を攻めづらくするためホームベースに覆いかぶさった。久保投手コーチも「際どいところは当たるから、ピッチャーは厳しいよね」と同情。だが、この日の2死球が示すように、ベテランが己のスタイルを崩すことはなかった。

 弔い星でもあった。巨人のコーチだった、木村拓也氏(享年37)が急逝した7日、下柳は悲痛な思いをブログにつづっていた。ダイエー時代、日本ハムに所属していた木村さんと、食事をともにしたこともあった。悲報からの初めてのマウンドで、4歳下の後輩にささげる白星をつかみ取った。【鎌田真一郎】

 [2010年4月12日10時14分

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