<中日1-9阪神>◇5日◇ナゴヤドーム

 待ってましたで4番の快音!

 阪神が4番新井貴浩内野手(33)の4打点の大暴れでナゴヤドーム6戦目にして初勝利を挙げた。満塁で内野ゴロの渋い先制打に、試合を決定づける豪快な5号3ラン。これまでナゴヤでは相手中日のクリーンアップBMWに豪打を見せつけられてきたが、金本欠場後の主砲を懸命にこなす新井サンが痛快にお返しした。上位進出を果たした黄金週間をきっちり白星締め。巨人の独走は許さんぞ~。

 3連戦で初めて、新井に笑みが浮かんだ。帰りのバスに向かう通路。そこには4番の仕事を果たした男の顔があった。「リラックスして集中していけました」。2点リードで迎えた4回2死一、二塁の好機。チェンの初球スライダーを完ぺきに捕らえた。虎党が待つ左翼席に弾丸ライナーで運ぶ5号3ラン。鬼門を打ち破る1発が勝負を決した。

 「連敗を止めて、8連戦を6勝2敗で終えることができた。交流戦前最後のナゴヤドームをいい形で終われた。これからは引きずらずに入っていけると思う」

 前日までの1、2戦目は8打席凡退。1発を含む4安打4打点と大暴れした中日ブランコとは対照的で、4番の浮沈がそのまま星取に直結していた。ナゴヤドームでは今季通算でも前日まで17打数1安打の2打点。同球場5連敗の責任を誰よりも感じていた。

 だがここで3タテを食らえば、巨人戦3連勝がムダになる。やっぱり4番が打つしかない。プライドをかけたこん身の一撃だった。

 うれしい祝福も待っていた。戻ったベンチではなんと、金本がコメントを用意してくれていた。「4番の意地を見せてくれました。さすが有言実行です」。すぐ広報部がメディア各社に配信。通常試合中の広報談話は、打投の本人もしくはコーチ限定発信で、阪神で“部外者”の発言が流れたのは史上初だろう。それだけ金本もうれしかった。4番を経験した者にしか分からない重圧。自身の離脱中、懸命に代役を務める弟分の姿に、拍手を送った。

 「背暗向明(はいあんこうみょう)」。新井は今年2月のキャンプで、1年の決意を示す言葉としてこの4文字を選んだ。毎年護摩行を行う鹿児島・最福寺の池口恵観法主から授かったものだった。「暗いことには背を向け、明るい方に向かって行きなさいということ。どんな時でも、前を向いて生きなさいということだと解釈しています。後ろを、過去を振り返るなと」。4番を任された今の心境は、この言葉に集約される。

 1回無死満塁ではしぶとく二塁にゴロを転がして先制点を運んだ。4打点は今季初、もちろん4番初の荒稼ぎ。9点大勝を導いた男を真弓監督も頼もしそうに見つめた。「ちょっと力みがあったけど、1本出たら力も抜けるでしょう」。そして「3連敗はできへんよ」とも。首位巨人に食らいつき、貯金を6に戻して2位キープ。その中心には絶対沈まない4番がいる。

 [2010年5月6日12時4分

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