<楽天3-5巨人>◇22日◇Kスタ宮城

 交流戦初の快挙だ。巨人長野久義外野手(25)が、2回に楽天岩隈から同点ソロ、9回にはバックスクリーンへ試合を決める5号2ランを放った。序盤の守備のミスを自らのバットで取り返し、自身初、交流戦でも新人初となる1試合2本塁打をマークした。長野の活躍で、巨人はこの日セ・リーグ唯一の勝利を挙げた。

 あふれる感情を抑えきれなかった。9回に試合を決める1発。ダイヤモンドを1周する長野は「よっしゃ!」と腹の底から叫び、拳を握った。「(ガッツポーズは)思わずやってしまいました。まさか入るとは思っていなかったんで、すごくうれしかった」。味わったことのない最大級の興奮に、クールな男の素顔が垣間見えた。

 杜(もり)の都が“長野劇場”と化した。まずは2回、右翼に同点の4号ソロ本塁打。9回1死一塁では勝ち越しの5号2ランを放った。巨人の新人では01年の阿部以来となる1試合2本塁打。「3連敗してたんで、どうにかして勝ちたいと思っていた」。08年以来の4連敗を阻止する値千金の2発だった。

 汚名返上の1発でもあった。1回1死一塁、右翼線に転がる打球のクッションボールの処理にてこずり先制点を献上した。「迷惑をかけたんで、何とか取り返したかった」。先発東野への謝罪を得点で示した。日本を代表する投手の岩隈から放った1発にも「風ですよ。たまたまです」と謙虚な言葉を並べた。

 グラウンドを離れても、その姿は変わらない。宮崎合同自主トレの休養日、金刃、松本の3人で“プチ同期会”を開いた。同い年だが、プロでは先輩。2人とも大学時代から旧知の仲だったが「いろいろ迷惑かけるかもしれないけど、よろしくお願いします」と丁寧に日本酒をお酌。「気を使わないで」という2人の言葉にも、「これはケジメだから」と頭を下げた。

 強力打線のカギを握る6番打者の活躍に、原監督は「当たりそのものも良かったですが、ああいう場面で打てたことがすごい」と絶賛。「6番に右打者が入ると、打線のバランスが良くなる。今の打順を守り抜いてくれれば、チーム力も上がる」とルーキーのさらなる活躍を期待した。お立ち台に上がった長野は言った。「明日も勝ちたいと思います」。興奮気味に誓った姿が、一回り大きく映って見えた。【久保賢吾】

 [2010年5月23日8時14分

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