<日本ハム2-4阪神>◇29日◇札幌ドーム

 ついに、天敵攻略や!

 阪神が日本ハム・ダルビッシュに今季ワーストとなる9安打を浴びせ、対戦6戦目にして初勝利を挙げた。4月17日以来の4番に復帰した金本知憲外野手(42)が、2点を追う4回に左中間二塁打で口火を切れば、5番に下がった新井も黙っていない。7回のダメ押し犠飛&3安打に足もからめ、パ・リーグのエースを打ち砕いた。

 勝負に徹した。マウンド上には、球界最高峰右腕のダルビッシュ。今年1月に合同自主トレを行い、“師弟関係”を築いた間柄でもある。年の差は19歳。一回り以上も年齢が離れているとはいえ、その高いプロ意識には連続試合フルイニング出場記録の世界記録を持つ金本でさえ、一目置いている。ただ、勝負の世界で私情を挟むわけにはいかない。心を鬼にしたアニキのバットが、ダルビッシュ攻略の突破口を開いた。

 2点を追う4回先頭の打席。142キロの外角高めシュートを完ぺきにとらえた。打球は鋭いライナーで左中間を破り、得点圏に進んだ。続く新井の安打で三進。6番ブラゼル一ゴロが敵失をさそう間に、全速力のアニキがチーム初得点を記録した。さらに城島の三ゴロが野選を呼び、新井も生還。相手のミスに助けられた面もあるが、たたみ掛けるような攻撃で同点に追い付いた。その先導役を担ったのは、間違いなく金本のバットだった。

 連続試合フルイニング出場記録が途絶えた4月18日(対横浜)の夜。金本の携帯電話に1通のメールが届いた。送り主は他でもない、ダルビッシュだ。世界記録を更新し続けてきた自身への畏敬(いけい)の念が込められていた。金本は「わざわざありがとう」とすぐに返信した。自身と同じように、志の高い若手から向けられた気遣いの言葉が、心に染みた。

 だからこそ、結果で応えたかった。この日、金本はダルビッシュとの対戦に照準を合わせたように、指定席だった4番に指名打者で復帰した。前日(28日)は首脳陣が「打線の流れというものもあるし、(打順の)並びに大幅な変更はない」と5番起用を示唆していたが、試合直前に4番での起用方針を決定。真弓監督は「カネの調子が上がってきているから」と説明したように、これで先発出場した試合は5試合連続安打を記録。この日の一打が勝利にも直結した。やはり虎の4番は、この男がよく似合う。

 [2010年5月30日11時34分

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