<中日3-1巨人>◇18日◇ナゴヤドーム

 怒りのG倒だ!

 中日谷繁元信捕手(39)が決勝タイムリーを放った。闘争心が沸点に達したのは2回だった。1死二、三塁から巨人東野との勝負。内角を厳しく攻めてくる相手にファウルで粘った。そしてフルカウントからの7球目、直球が右手首を直撃した。じっと痛みをこらえていた谷繁が鬼の形相に変わった。

 「おいっ!」。一塁へ歩きながら東野をにらみつけると一喝した。相手が帽子を取って謝ったが、怒りは収まっていない様子だった。この回は無得点だったが、リベンジの機会はすぐにきた。0-0で迎えた4回2死一塁。死球を受けた直球に迷いなく踏み込んだ。外角球を右翼越えの先制タイムリー。均衡を破り、試合の主導権を握る値千金の一打だった。

 「あれは痛さのあまり頭にきちゃったんだ。東野にというわけじゃない。(タイムリーの時は)痛みは気にならなかった。バットが振れるわけだから」。

 試合後は笑顔で水に流したが、「打倒巨人」に燃える男だ。横浜に入団したプロ1年目から、自分を売り出す絶好の機会が巨人戦だった。テレビの全国中継があり、周囲からの評価も高かった。何より強い相手を倒すという勝負師の“本能”が谷繁にはあった。

 今季の打率2割2分9厘だが、巨人戦に限っては3割8分1厘に跳ね上がる。熾烈な優勝争いを繰り広げる中での直接対決に燃えないはずがなかった。6回にも左翼へ二塁打を放ち、3打数2安打。守備でも山井を好リードし、あと1歩で大記録の快投に導いた。2位浮上へ、あと1歩。竜の闘将が逆転優勝への道を切り開く。【鈴木忠平】

 [2010年8月19日11時6分

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