<中日5-2横浜>◇12日◇ナゴヤドーム

 中日森野将彦内野手(32)の打球は一、二塁間を鋭く抜けた。7回の第4打席。貴重な5点目となる右前適時打を放ったが、スタンドは「ああ~…」というため息に包まれた。二塁打が出ればサイクル安打だった。「ため息が聞こえましたね。そりゃあ、意識しましたよ。でも、そんなに世の中、甘くない」。4安打4打点のヒーローはそう言って、笑わせた。

 初回無死二、三塁の好機で、カウントは1-3。森野は、追い込まれた横浜先発阿斗里の心理を見透かし、真ん中高めの直球を振り抜いた。「久しぶりに初回にいい形で点が取れた」と自画自賛の1発は、2年連続20号となる3ラン。3回の第2打席では中堅越えの三塁打、5回の第3打席では右前打でサイクル安打に王手をかけた。

 今季、両リーグ最多43本の二塁打を放っているだけに“予感”たっぷりだったが、史上62人目の快挙はならなかった。それでも、2位阪神との1・5ゲーム差をキープする勝ち星を得て、森野は「丸いボールを丸いバットで打つんですから、どこに飛ぶかわかりませんよ」と笑い飛ばした。

 8日阪神戦メッセンジャーから頭部死球を受けた。試合後、森野は心配するスタッフに病院での検査は受けないと伝えた。「大丈夫なものは大丈夫。もし(病院で)どこか悪いと言われたら、グラウンドに立てないじゃないですか」。優勝争いのまっただ中で、それほどの強い意志で打席に立っている。

 勝率7割5分を超える本拠地を離れ、14日から苦手なビジター6連戦。「ビジターとか、ホームとか言ってられない。もう優勝しか見えていない」。頼れる選手会長が高らかに宣言した。【鈴木忠平】

 [2010年9月13日9時0分

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