<ヤクルト4-1巨人>◇27日◇静岡

 好調の小川ヤクルトに早くもVの予感がする。雨中決戦となった巨人との静岡第2ラウンドを制して8連勝。先発由規投手(21)は中断の影響もあって5回4安打1失点で降板したが、2勝目をマークした。東日本大震災で行方不明となっていた仙台育英の先輩、斎藤泉さん(享年22)の訃報が登板前に飛び込み、悲しみをこらえながらの熱投だった。畠山の同点弾、バレンティンの勝ち越し&ダメ押し弾などで首位をがっちりキープした。

 投球再開の準備を進めるヤクルト由規に、再び大粒の雨が降り注いできた。5回を1失点で投げ終えた直後、午後8時3分に中断。同20分に投球練習を再開したが、無情にも雨脚は弱まらない。「ブルペンに入って、肩をつくってはいたけれど、代わるぞと」。結局58分間の中断。そのままマウンドを譲った。

 試合開始直前に大雨が降り、開催自体が危ぶまれた。ぬかるむマウンド、滑る指先。すべてを受け入れて集中する。4回、先頭打者の亀井に対して1ボール2ストライクから、外角への152キロで空振り三振に切った。直後に大雨で2分間中断したが、無失点で切り抜ける。悪条件の中、2回にスクイズで許した1点に抑えた。

 悲しみを胸に秘めた、マウンドだった。

 この日、石巻市で仙台育英時代にバッテリーを組んで甲子園に出場した1学年上の斎藤泉さんの遺体が発見された。東日本大震災から1カ月半以上が過ぎていた。長く行方不明だった。由規の父均さんや、高校時代の恩師、仙台育英・佐々木順一朗監督が実家で対面した。枕元に、ヤクルトのユニホームを手向けた。

 由規は登板前に一報を聞いた。

 遠く静岡に降った涙雨。震災直前、仙台育英・佐々木監督に電話をすると、偶然斎藤さんが一緒だった。それが最後だった。由規にとっては、高校時代を支えてくれた恩人。勝利が何よりと、胸に刻んだ。

 開幕2戦目で敗れた巨人打線に立ち向かった。決して本調子ではない。それでも両翼91メートルの狭い球場で1失点に抑えた。震災後、由規は変わったと、佐々木監督は言う。「自分の悩みがどれだけ小さいかを知ったんじゃないかな。地元のOBや後輩はみんな由規の活躍を見ている。頑張ってほしい」。

 2度の中断を挟んだが、9回まで試合を行い、8連勝の立役者になった。由規は「旅行とかで雨はあるけど…。プロに入ってから中止になったことがないんです。晴れ男だと思ってます」。

 最後まで悲しいそぶりは見せず、バスに乗り込んだ。【前田祐輔】