<楽天3-2ソフトバンク>◇19日◇Kスタ宮城

 楽天がサヨナラ勝ちで、初優勝へのマジックを7に減らした。1点リードの8回に同点に追いつかれたが、9回裏に松井の二塁打でチャンスを作ると、伊志嶺忠捕手(28)が右前打を放ちサヨナラ勝ち。プロ初のサヨナラ打で劇的勝利を呼んだ。明日21日の日本ハム戦(札幌ドーム)はエース田中将大投手(24)が先発予定。さあ、優勝へラストスパートだ。

 “まさか”の伊志嶺が打った。同点の9回1死二塁。打率5分9厘だったが「絶対に決めてやろう」と、五十嵐の直球を捉えた。引っ張った打球が一、二塁間を抜ける。二塁走者の松井のホーム生還を見届け、ガッツポーズ。駆け寄る仲間とはしゃぎ、何度も抱き合った。「興奮して何が何だか分からないです!

 気持ちいいです」。本拠地初のお立ち台で叫んだ。

 初優勝へカウントダウンが始まる中で、またニューヒーローの一打が生まれた。8月25日には3年目の榎本がプロ初のサヨナラ打。次々に、ヒーローが出てくる。沖縄・北谷町出身ということで星野監督から「シーサー」と呼ばれる伊志嶺。普段は厳しくされるが、この日ばかりは「シーサーね、まさかね。今日は褒めてやっていいだろう」と言ってもらった。

 チャンスを待っていた。8月11日に1軍昇格。2軍調整中に、打撃フォームを改造した。大久保2軍監督からの助言で、猫背の意識で構え、足も高く上げるようにした。「変えてからいい感じなので続けてます」。しかし、星野監督からは「全然ダメだ」と酷評された。めげずに、続けた。「力が伝わるようになった」。手応えをつかんだスイングは五十嵐の150キロ直球にも、力負けしなかった。

 鬼門も打ち破った。正捕手の嶋欠場の試合は6連敗中だった。嶋以外では勝てないとレッテルを貼られそうだったが、ビデオで自分の配球を研究。ソフトバンクの強力打線を2点に抑えた。「1試合、1試合勝ちにこだわっていきたいと思います」と、初優勝へ意欲を見せた。来月下旬には第1子が生まれる予定で、パパになる。チームも、伊志嶺も歓喜の瞬間はもうすぐだ。【斎藤庸裕】

 ◆伊志嶺忠(いしみね・ただし)1985年(昭60)6月22日、沖縄県生まれ。北谷-東京情報大。大学3年秋に千葉県リーグで3冠王。07年大学・社会人ドラフト3巡目で楽天入団。通算69試合、128打数25安打、本塁打なし、11打点、打率1割9分5厘。178センチ、78キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸1100万円。家族は夫人。