<ソフトバンク7-8楽天>◇25日◇ヤフオクドーム

 首位ソフトバンクが3連敗し、自力優勝の可能性が消滅した。7回途中に登板のパ・ホールド王の五十嵐亮太投手(35)が大乱調。押し出し4個を含む5四球で1死しか取れず自滅。楽天に4点を献上して逆転負けした。マジックに王手をかけて1勝7敗と大失速し、逆転勝ちした2位オリックスに逆マジック7が点灯。残り3試合ですべてが決まる。

 ファンは信じられないだろう。何度も勝利を運んできた勝利の方程式が崩壊した。まずは秋山幸二監督(52)の解説を聞こう。「五十嵐も森もそうだけど、回の途中からまたいでいくというのは最初からあった。これまでの実績で任せたところがある。今までずっとやってきて、ちゃんと結果を残してきたんだから。肩?

 準備はしていた」。ブルペンから4投手連続のイニング途中からの継投はプラン通り。1年間、信頼に応える投球を重ねてきた。ただ、計算が狂ったというわけだ。

 7回の惨劇へ時計の針を戻そう。悲鳴と怒号だけでない。失望したファンのジェット風船までも飛んだ。ベンチに追い返された五十嵐の肩越しに致命的な「4」の文字。抑えのサファテにつなぐセットアッパーがボロボロになっていた。

 スコアは6-4。1死一、二塁。森からバトンを受けた。ただカーブは抜け、直球は指に引っかかり、逆球を連発した。ジョーンズに四球を与えて満塁とすると、2者連続押し出し四球で同点。五十嵐は「僕の状態が問題だった。準備もしていた。良くないながらマウンドでの修正ができなかった」と全面的に非を認めた。これまでの継続的な信頼度と当日の乱調をてんびんにかけ、続投と決断。指揮官の勝負タクトだった。

 優勝目前の141試合目。期待と、重圧が一気に集約されたマウンド。それを1人で受けとめた五十嵐だったが、さらに2死満塁から2者連続四球で2点を勝ち越された。44ホールドポイントと球団記録を更新し続けてきた右腕にタオルが投げ込まれた。散った。

 再び秋山監督の声に耳を傾ける。「ベテランでも、経験があってもそういうところ(重圧)が出てくる展開ではある。ここを乗り越えていかないと。残り3試合全力で勝っていくことだけだ」。もうマジックがつくことはないが、最短優勝は28日とオリックスより早く、優位性は変わらない。ただ、この日に受けたダメージは大きい。野球の神様は簡単に優勝をくれない。【押谷謙爾】

 ▼五十嵐が7回に5四球を与え、嶋、枡田、岩崎、西田の4人に押し出し。1試合4押し出しは00年6月3日ブロウズ(オリックス)が近鉄戦で記録して以来、8人目のプロ野球ワーストタイ。1イニングで4押し出しとなると、54年6月12日田村(高橋)が西鉄戦の8回に記録して以来、60年ぶり5人目の屈辱となった。