<明治神宮大会:法大1-0三重中京大>◇12日◇大学の部準々決勝◇神宮

 DeNAにドラフト2位指名された法大(東京6大学)の三嶋一輝投手(4年=福岡工)が、大会史上4位タイの16三振を奪い、三重中京大(北陸・東海3連盟)を4安打完封した。接戦を制し、今日13日の準決勝に進出した。

 積み上げた三振は、三嶋にとって結果でしかなかった。「調子も良くないし、気を抜いたらいつ逆転されるか分からない。1つ1つ大切にアウトを取って、終わってみたらそんなに取ってたんだ、という感じです」。1点差の緊張感の中、2回以降毎回の16K。公式戦自己最多、大会史上4位タイに食い込む圧巻の奪三振ショーだった。

 たった2つの球種で三重中京大打線を手玉に取った。直球に10キロ近い緩急をつけ、スタメンに6人並ぶ左打者には縦スライダーを効果的に使った。金光興二監督(57)は「今まで力で投げていましたが、100%でなくてもキレがあると分かってきたようです」と説明する。4回1死一、三塁のピンチはスライダーで空振り、直球で見逃しと連続三振に切り、速球は9回でも148キロを計測。危なげなく4安打で完封した。

 「不調」かつ「2球種」でこの内容だ。伸びしろ豊かな155キロ右腕は、DeNAの光明となる可能性を秘める。視察した吉田スカウト部長は「カーブやフォークがなくてもいい球を放っていた。駆け引きだとか課題はまだあるけど、我々は乗り越えられる選手しか指名しません」。落ちる変化球も磨きをかけている最中で「自主トレには今まで以上の調子で来ないと」とさらなる飛躍に期待した。

 7回からは154キロ右腕、楽天2位則本との剛腕対決を楽しんだ。プロではリーグこそ違うが「周りが言うので意識してました。いつかまた投げ合いたい」と好敵手との再戦を望んだ。

 これで全国4強。今日13日の準決勝で負ければ学生野球にピリオドが打たれる。「僕、負けたら終わりって考え方好きじゃないんです。そう考えた時点で、気持ちの勝負に負けてる。まずは明日も勝って、日本一になれたら」。淡々と紡ぐ言葉に、三嶋の負けん気が見え隠れする。来年以降、5年連続セ・リーグ最下位のDeNAの救世主となれるか。まずは81年以来の神宮大会優勝をかけて、その真価を披露する。【鎌田良美】