日本ハムにドラフト1位指名された早大・斎藤佑樹投手(22=早実)が21日、プロに向けて始動した。前日20日、納会を終えてアマチュア野球にひと区切りをつけた。はやる気持ちを抑えきれず、この日、東京・東伏見の早大グラウンドで午前6時すぎから練習を開始。ランニングやキャッチボールなどで約2時間汗を流した。ベスト体重を維持しながら体のキレを増すことを狙い、「毎日体を動かしたい」と宣言した。

 日の出時刻の午前6時22分と同じころ、まだ薄暗さの残る早大グラウンドで、斎藤は始動した。近くを流れる石神井川の水音と、小鳥のさえずりが聞こえるだけの静寂。気温は10度に満たないが、気分新たにすがすがしい朝を迎えた。午後2時すぎ、グラウンドに姿を現した斎藤は早朝に約2時間体を動かしていたと明かし、「朝6時には目が覚めてしまうんですよ」と、いたずらっぽく笑った。

 優勝して涙を流した18日の明治神宮大会から3日が経過した。前日20日には、グラウンドで行われた納会に参加して「ワセダを選んでよかった」と涙を流し、アマチュア野球にひと区切りをつけた。完全に休養したのは19日だけ。この4年間の疲れを癒やすには短い休日だが、はやる気持ちを抑えられなかった。その意気込みが、早朝の始動となって表れた。

 これまでも早朝練習には取り組んでいた。今年3月、米国キャンプ中にドジャースのキャンプを視察した。あこがれのメジャーリーガーたちが、全体練習が始まる前、朝早くから熱心に練習していると知り、感銘を受けた。寮の点呼は午前7時。その前にトレーニングを行い、朝食を取って、再び寝る。そうすることで、午後からの練習で体が軽く感じることを実感。春秋のリーグ戦の期間中にも、実践していた。

 「日本ハム斎藤」として活躍するため、自分の生きる道は十分に分かっている。この日、「スピードにはこだわらない。真っすぐの切れとコントロールを磨いていきたい」と、理想の投手像を口にした。最速150キロを誇るが“スピードガンコンテスト”には興味がない。多彩な変化球を低めに集めると同時に、キレのある直球を決めてこそ、投球の幅が広がると自覚している。

 早朝の始動には過去の“失敗”も影響している。早実から早大に入学した際、体重は約80キロまで増え、体のキレを取り戻すのに苦心したという。現在の75~76キロの体重を維持しておきたいという狙いがある。退寮や卒論の提出に向けた準備などで、多忙な日々を送ることになるが「(練習は)毎日やりたいですね」。来年1月中旬に始まる新人合同自主トレまで、ほぼ無休で体を動かすつもりだ。

 午後にグラウンドから引き揚げる際には、数十人のファンに囲まれた。サインをねだられると、快くペンを取った。色紙には「斎藤佑樹

 10」と、もうすぐ書くことのなくなる、慣れ親しんだ背番号を書いた。思い出が詰まった東伏見を去る日は近づいている。ただ斎藤の頭は、惜別の思いより、一流のプロになろうとする決意でいっぱいのようだった。【清水智彦】