楽天のドラフト1位・東福岡・森雄大投手(18)が29日、福岡市内の同校で指名あいさつを受け、星野仙一監督(65)に叱られたい願望を明かした。甲子園経験はないが、キレのある最速148キロの直球が武器で、将来性を期待される本格派左腕。会見では、闘将・星野監督に対し「厳しくご指導していただきたい」と覚悟を口にし、厳しいプロの世界でいばらの道を歩む決意を示した。

 仙台で待ち受ける闘将に、森はワクワクしているかのようだった。指名あいさつ後、会見に臨むと「やっと実感が湧いてきました」と、素直な気持ちを口にした。続けて、星野監督の印象について問われ「非常に熱い方というイメージがあります。怒っているイメージもありますが、厳しくご指導していただきたいです」。球界一とも言える同監督の恐怖のムチにおびえることなく、全身で受け止めたい覚悟を表した。

 自身も厳しい道を歩んできた。「いつも怒ってましたよ」と言う東福岡の葛谷修監督(54)から、練習への取り組みから私生活まで指導を受けてきた。中でも大きな転機は3年の春。背番号「1」を背負いながら、福岡県南部大会の初戦で敗退。その後、同監督から「うぬぼれるな」と厳しく叱られ、エースナンバーを剥奪された。最後の夏は背番号「11」で終えたが、同監督は「一番の戒めになったんじゃないかな。彼にとって大きかったと思う」。屈辱を乗り越え、ドラフト1位の評価を勝ち得た。

 高校3年間を振り返り、森は「自分はあまり褒められたことがないので。怒られて育つと思うので、怒られた方がいい」と話し、星野監督の厳しいお叱りを浴びる心構えだ。そんな心意気を仙台で伝え聞いた星野監督は「そんなこと1軍に上がってから言え!」と早速、一喝。まずは怒られるレベルにまで上げることを求めた。

 将来性を期待されているが、森は「1年目から1軍で出ないといけないという気持ちをしっかり持ってやりたい」と決意を示した。指名後に球団のことを勉強し、背番号の空き番を知ると「16番がいいです。高1の夏に初めてもらった番号でもあるので」と希望があることも明かした。九州からは遠い東北でプロの世界に飛び込む。「修業するつもりですし、楽しみの方が大きいです。楽天の顔となれるように、球界を代表する左腕になりたい」と高らかに誓った。【斎藤庸裕】

 ◆森雄大(もり・ゆうだい)1994年(平6)8月19日、福岡市生まれ。姪浜小4年で野球を始める。内浜中では学校野球部に所属。東福岡では1年からベンチ入りし、甲子園出場はなく、3年夏は県8強。最速148キロの本格派で、持ち球はカーブ、スライダー、チェンジアップ。好きな選手は西武菊池。184センチ、76キロ。左投げ左打ち。血液型AB。<星野監督“怒り”教育>

 ◆中日時代

 39歳の若さで最初の監督に就任。鉄拳も辞さない熱血指導で育てた。有名なのは、捕手の中村武志。星野監督は「俺に呼ばれるとなぐられるんじゃないかと、マスクをかぶって来るようになったんだ」と懐かしむ。

 ◆阪神時代

 選手への鉄拳は影を潜めたが、拙攻に怒りを爆発させ、甲子園のベンチの扇風機を殴って壊したこともあった。

 ◆楽天時代

 鉄拳はないが、辛辣(しんらつ)な言葉が飛ぶ。拙攻の銀次に「野球をやったことないんじゃないか」。大量失点の釜田に「なめとったら2軍だ」。勝っても回の途中で降板の美馬に「5回までの投手だ」。面と向かって褒めることは、ほとんどない。