準々決勝から「侍の4番」を任された吉田正尚外野手(29)が、ひと振りで空気を変えた。

重たい3点を追う7回2死一、二塁、左腕ロメロが仕留めに来た138キロのチェンジアップを、右手1本で右翼ポール際へ運んだ。「チームが勝てばいいと思ったので、3ランは興奮しましたけど、最後、みんなで分かち合えたのがすばらしい」。

生還直後は、出迎えた大谷、近藤に力ずくで抱きついた一方、打席内では冷静だった。直前には同球種を空振り。技術面で修正した。「体が開いてしまうとダメだと思ったので胸を我慢しながら、最後ヘッドが残ったので切れずにいったのかなと」。重苦しい雰囲気を吹き飛ばす1発で、大会最多記録となる13打点目をマークした。守備でも8回2死二、三塁から左前打を捕球すると、本塁へ好返球。二塁走者を刺して追加点を防いだ。「一生の思い出に残る試合でした」。

レッドソックスと6年総額9000万ドル(約122億円)で契約したこともあり、同じフロリダ州のキャンプ地からは、地元ボストンの担当記者らが取材に駆け付けた。辛口で知られるメディアの前で、劇弾を含む3安打3打点1四球と、大舞台での勝負強さを見せつけた。泣いても笑っても残りは1試合。「あとはこのチャンスをつかめたので、挑むつもりで頑張りたい。おやすみなさーい」。チーム内で最も日焼けした吉田は、白い歯を輝かせながら宿舎へ向かった。【四竈衛】

○…栗山監督の“チャレンジ成功”が劇的勝利の起点となった。3点を追う7回1死一塁の守備。山本がトーマスから三振を奪った場面で一塁走者トレホが二盗。“甲斐キャノン”がさく裂したかに見えたが、源田のタッチをかいくぐろうとしたトレホの“神スライディング”で判定はセーフとなった。ここで指揮官は両手を両耳にあてるポーズで球審にチャレンジ(リプレー検証)を要求。長い協議の末に判定が覆って三振ゲッツーが成立し、その裏から始まった猛反撃を呼び込んだ。

▼3打点の吉田が今大会13打点とし、前回大会(17年)でバレンティン(オランダ)が記録した大会最多の12打点を更新した。イタリア戦に次いで2試合連続本塁打。WBCで日本人打者の2試合以上連発は06年多村(横浜=2戦)09年村田(横浜=2戦)17年中田(日本ハム=3戦)筒香(DeNA=2戦)に次いで5人目。4番で2戦連発は筒香以来2人目。

【関連記事】WBCニュース一覧