【サンフランシスコ(米カリフォルニア州)16日(日本時間17日)】侍ジャパンが、大一番を前にドタバタ騒動に巻き込まれた。今日17日(同18日午前10時)にプレーボールとなる準決勝のプエルトリコ戦を翌日に控えたこの日、不測のトラブルが続発した。選手の野球用具などの荷物の搬送ミスで、練習開始が予定よりも7時間遅延して午後7時開始のナイターへ変更。さらに練習後にはチームバスのバッテリーが上がってしまい、車内で30分間も缶詰めになるハプニングにも見舞われた。しかし、苦難があればこそ喜びも大きい。国際大会らしい受難をはねのけ、大会3連覇へ王手をかける。

 準決勝に向け前日練習を終えた侍ジャパン。午後9時過ぎのAT&Tパークに詰め掛けたファンから大きな声援を浴びながら、さっそうとバスに乗り込んだ。宿舎に向けて出発…と思われたが、まったく動きださない。何と2台あるバスのうち、山本浩二監督(66)らが乗る1号車のバッテリーが上がり、動かなくなってしまった。1号車が動かないと、真後ろに駐車した2号車も動けない。10分、15分、20分。関係者は慌ただしく協議し、選手らは真っ暗な車内に待機を余儀なくされた。

 耐えきれずに車外へ出てきた山本監督は「…」とムッツリした表情を浮かべた。内川は「(バスを)蹴ったらいいんじゃないの」とあきれ顔だった。待つこと30分。ついにチーム関係者は最後の手段に出た。1号車の後部を必死の形相で押して車体を動かし、2号車が発車できるスペースを作った。期せずしてファンから「ニッポン・コール」が巻き起こった。準決勝の盛り上がりの予行演習か…。選手たちは動けるようになった2号車にすし詰めとなって無事に宿舎へ戻れた。

 実はトラブルは、これだけではなかった。正午からの予定だった練習は、午後7時開始に延期された。原因は、調整先のアリゾナ州から送った荷物が間に合わなかったことにあった。前日15日、選手はチャーター機でサンフランシスコ入りしたが、野球用具などは別便で輸送していた。その荷物が、なぜかロサンゼルスへ運ばれてしまった。チーム関係者によれば、大会主催者のミスで、ロスで侍ジャパンの荷物を受け取ったトレーラーの運転手が「どこに持っていけばいいんだい?」と戸惑っていたという。

 その荷物は午後6時過ぎに球場へ到着したが、そこでもハプニング。運んできたトレーラーが、球場の鉄柵の門に衝突して「ガッシャーン」と爆音を出した。誘導したポリスマンら周囲が騒然。もちろん中身のバットなどは無事だったが、一難去ってまた一難では収まらなかった。バタバタの総仕上げになった。山本監督は「いろいろ練習時間とか(変更が)あると聞いていたので」と涼しく流しても、少々うんざりした様子だった。

 ただ、考えようによっては困難をクリアする予行演習だったのかもしれない。山本監督は「今までと一緒。日本の野球をすること」と力説した。梨田野手総合コーチも「すべてに順応しないといけない」と平常心を強調した。この日のように予期せぬ事態が起きても、どんな苦しい場面がやってこようとも、クリアして3連覇へ王手をかける。【高山通史】

 ◆WBC日本代表過去のアクシデント

 今月14日には調整先のアリゾナで、マドンナも滞在したという宿泊先の高級ホテルに朝食が用意されていなかった。選手らは球場で取れると思っていたが、そこにも準備されておらず。急きょ手配したが、そのまま練習する選手もいた。また第1回大会前の06年2月、当時巨人の上原が宮崎から代表合宿のため福岡に移動する際に飛行機がエンジントラブルのため欠航したこともあった。