元画家志望の記者がプロレスラーをデッサンし、その魅力を探る企画をスタートします。初回のモデルは新日本プロレスの小島聡(48)。10分4本勝負で、業界屈指の太さを持つ腕とリアルな肉質に迫りました。【取材・構成・絵=高場泉穂】

新日本プロレスの小島聡をモデルにデッサンする高場泉穂記者(撮影・鈴木みどり)
新日本プロレスの小島聡をモデルにデッサンする高場泉穂記者(撮影・鈴木みどり)

取材しながら、よく選手の体を眺めている。絵描きの夢をあきらめた私にとって、プロレスラーは久しぶりに描きたい気持ちを呼び起こしてくれる人たちだ。ダメ元で新日本の小島選手にモデルを頼んだところ、まさかの快諾。3月末、都内某所で、10分4本勝負のデッサン会が実現した。

★1本目 最初は両腕を上げたポーズ。腕に絞って、急いで鉛筆を走らせる。描いちゃうぞコノヤロー、と強い気持ちを胸にスタートしたが、予想以上にうまく描けない。焦っていると小島選手も「きつい…」と震え始めた。5分経過し、たまらず紙を変更。今度は全身を描いてみたが形を捉えるのに苦戦。2枚とも中途半端な出来になってしまった。小島選手は「思ったより本格的だね」と絵を見ながら微妙な表情。惨敗だ。

1個目のポーズ
1個目のポーズ

★2本目 ヌードモデルがよくやる無防備なポーズを要求した。小島選手も「こんなのしたことない」と恥じらいながらも、ノってきた様子だった。腕に加え、肉がはみ出た腹部にも目がいく。緊張とゆるみのバランスに魅入られ、10分で結構描きこめた。「こんなリアルに描かれると思わなかった」と、腹部攻撃が効いているようだった。

2個目のポーズ
2個目のポーズ

★3本目 後ろ向き。余裕が出て、一回り大きい紙に鉛筆、木炭などさまざまな素材で描いてみた。小島選手は「何分たった?」などと口にしながらまた震えている。構わず描き続けると、腕から肘にかけての3頭筋に美しい線が通っているのに気付いた。腹部のラインもやはり面白い。大胆な1枚が出来た。

3個目のポーズ
3個目のポーズ

★4本目 最後は台に右足をあげ、前を向く形。腕は大げさに太くするぐらいでちょうどいい。胸部も描きこんだ。顔の細部まで至らなかったが、プロレスラーらしい“異形”を捉えられたと思う。40分の戦いを終えると、小島選手も私も脱力し、水を飲んだ。

4個目のポーズ
4個目のポーズ

練習不足は否めず、勝ったとは言えない。でも、徐々に盛り上げられた実感はある。小島選手も「新鮮。楽しかった」と対戦を振り返ってくれた。真剣勝負を重ね、もっと実戦感覚を取り戻したい。

※動画はニッカンコムやユーチューブで見られます

新日本プロレスの小島聡(左)は高場泉穂記者が書いた自身のデッサン画を手に笑顔(撮影・鈴木みどり)
新日本プロレスの小島聡(左)は高場泉穂記者が書いた自身のデッサン画を手に笑顔(撮影・鈴木みどり)

◆高場泉穂(たかば・みずほ)1983年(昭58)6月8日、福島県生まれ。2浪の末に東京芸大美術学部芸術学科合格。08年入社。整理部、東北総局を経て15年11月からフィギュアスケートなど五輪競技を担当。18年12月からボクシング、プロレスなどを担当。