20年東京五輪まであと3年。アマチュアボクシングは両国国技館にて開催されるが、向こう3年、プロにとっては頭を悩ませる問題がある。会場がない、世界戦を組みたくても、テレビ局が放送に前向きでも、肝心の試合を行う場所がない。首都圏ではそんな事態が多くなりそうな様相だ。

 先頃、WBA世界ミドル級タイトルマッチの開催が発表された。同級1位村田諒太(31=帝拳)が王者アッサン・エンダム(33=フランス)との5月以来の直接再戦に挑む大一番だが、交渉に入った両陣営、テレビ関係者を悩ませていたのは、会場をどのように確保するかだった。

 都内では、世界戦を行う会場としては両国国技館、大田区総合体育館、有明コロシアム、東京国際フォーラムなどがある。興行規模的に求められる収容人数が4000人以上の施設は限られている。その主要箇所の年末までのスケジュールがびっしりと埋まっていた。結局は10月22日に両国国技館で開催の運びとなったが、リング、大型スクリーンなどの舞台設置は興行当日に行う強行軍だという。無理を承知しなければ、確保が難しかった。

 各競技が会場確保に苦労している背景にあるのが、東京五輪だ。既存施設を使用する場合、改修工事を行う必要が出てくる。そのため一時的に使用できなくなり、その影響で開いている施設に予約が殺到するという構図。国立代々木競技場は7月2日から休館に入っている。東京国際フォーラムも17~18年に改修工事を予定している。

 競合相手はスポーツ団体だけではなく、音楽業界もいる。東京五輪に伴うコンサート用の施設不足は「2016年問題」として取り上げられ、いまも続く。先々を見ても、日本武道館が19年9月ごろから五輪後まで使用不可になる計画で、他会場の予約でバッティングの機会が多くなりそうだ。

 あまたあるスポーツ競技でも、特にボクシングは会場確保が難しい。世界戦で半年以上前から開催日が決まっていることはほぼない。両陣営が協議して、開催国が決まり、そこから会場を探すのが通例。長期的に、先々を見て予約を入れることができない。例えばある世界王者が1年間に3試合を行うとして、4カ月に1回。実質的には2、3カ月前にならなければ試合の候補日も決まらない。全日本選手権などある程度定期的な開催が見込めるような競技であれば1年先も見越して動けるが、ボクシングではそうはいかない。

 思い通りに会場が決まらなければ、過去最高の13人の国内ジム所属世界王者を抱える現状にとっては、マイナス面は大きい。首都圏を回避して探すにしても、興行的に成功の可能性が低くなり、難しい状況だと話す関係者もいる。抜本的解決策はないだけに、その影響が最小限にとどまってほしい。【阿部健吾】