プロレスリング・ノアの拳王(34)が、5月28日の後楽園大会で、恩師・新崎人生と対戦した。明大の日本拳法部で、全日本選手権2連覇と活躍した拳王を、プロレス界に導いたのが人生だった。同じ徳島県の出身で、人生のスカウトによって拳王はみちのくプロレスに入団。プロレス人生のスタートを切った。

拳王というリングネームをつけてくれたのも、人生だった。みちのく入門前に拳王から相談を受けた人生は、みちのくではなく、新日本、全日本、ノアなどのメジャー団体入団を勧めたという。拳王の将来性を高く買っていたからだ。その後、拳王がノアへ移籍するときも、背中を押してくれた。17年に拳王がGHCヘビー級王者になったときも喜んでくれたという。拳王にとって、ノア入団後初めてとなる人生との対戦は、その成長ぶりを恩師に見せるリングでもあった。

対戦が決まってから拳王は「人生の首を取る」などと挑発を繰り返した。リング上では、ゴングが鳴る前から拳王が人生の元に歩み寄り、胸を反らせて一触即発の緊張感を醸し出した。試合が始まると、拳王の左ハイキックと人生の地獄突きの応酬が、会場を熱狂させた。

試合後は、人生が珍しくマイクを握り「拳王、オレの首を取るとか、取らないとか言っているらしいじゃないか。まだ、52歳なんだよ。あと20年ぐらい待ってくれ」と拳王を挑発。拳王は「今すぐにでも、倒してやるからな」と気持ちを高ぶらせた。

インタビューが終わった後、拳王に話を聞いた。「人生さんは自分をプロレスの世界に入れてくれた人。みちのく時代以来、5年ぶりぐらいの対戦ですかね。これこそ、プロレスの醍醐味(だいごみ)ですよ。お客さんにも、プロレスってこんなに面白いというところが見せられたと思います」と、晴れ晴れとした顔で話していた。師匠の人生との対戦を心の底から喜んでいた。戦いの中に人生があるから、プロレスは多くの人を引きつける。拳王と人生の師弟対決はこれからも続く。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

「拝み渡り」を決める新崎(2018年06月24日撮影)
「拝み渡り」を決める新崎(2018年06月24日撮影)