元年俸120円Jリーガーで昨年から格闘家に転向した安彦考真(43)が、8月27日に行われた「EXECUTIVE FIGHT~武士道~」でKO勝ちし、デビュー2連勝を飾った。この試合で安彦はどうしても勝利を届けたかった人がいた。

大腿(だいたい)骨頭の血行障害により骨頭の壊死(えし)が生じる難病「ペルテス病」と闘う広木勇太君(小6)。昨年9月に発症し、現在もリハビリを続けながら、装具や松葉づえでの生活を送っている。安彦は数年前、サッカーのJ2水戸時代に父の仁さんと仕事で知り合って以後、今夏プレミアリーグのブライトンに移籍した三笘らと一緒に交流を持つようになった。

Jリーガーを目指し「サッカーのセンスがあった」(安彦)という勇太君は、昨年「足の付け根が痛い。歩くのが辛い」と訴え、その後病院で難病と診断された。昨秋のイベントで再会した時に病気のことを知った安彦は、両親に心配をかけないように明るく振るまう勇太君の姿に自分も元気づけられたという。

「自分の戦う姿が少しでも力になってくれたら」。格闘家に転向したのは自分の夢のためでもあるが「全国の人に勇気と元気を与える。それができないとやっている意味がない」と話す。試合では「(予想は)9分9厘、向こうだと思っていた」と言いながらも試合終盤にKOを奪い、目標であるRIZIN出場に望みをつないだ。勝利後、安彦はリング上で勇太君への思いを口にした。

安彦 サッカーが大好きでやりたくてもピッチに立てない小学生がいて、その子が僕の姿を見て、少しでも頑張ろうと思ってくれたら。どんな困難なことでも(打開する)可能性はある。自分にもまだまだ何かできるんじゃないかと。勝ち負けだけでなく、格闘技に挑戦する姿を見せて、日本を元気にしたい。

もらったトロフィーは勇太君にプレゼントするという。逆境を跳ね返して勝利をつかんだ安彦の熱い思いは、再びピッチに立つためにリハビリに励む勇太君の胸にしっかり届いたに違いない。【松熊洋介】

デビュー2連勝を飾った安彦考真(後方左)と広木勇太君(前列中央)の家族(安彦考真提供)
デビュー2連勝を飾った安彦考真(後方左)と広木勇太君(前列中央)の家族(安彦考真提供)
デビュー2連勝を飾った安彦考真(後方)と広木勇太君(安彦考真提供)
デビュー2連勝を飾った安彦考真(後方)と広木勇太君(安彦考真提供)