1年納めの11月場所も終わり、2020年の本場所の戦いも閉幕。コロナ禍により年5場所となりましたが、苦境の中でも力士たちは奮闘しました。日刊スポーツでは年末恒例「大相撲日刊年間大賞」を、今年も掲載します。競技性の違いで、野球のように個人成績が詳細に出ない中、日刊スポーツの相撲担当記者が、さまざまなデータから“個人賞”を勝手に制定するものです。ここでは紙面では掲載されないものを紹介します。重ねがさね“勝手に”決めた賞で、対象力士は5場所全てで幕内に在位した力士29人に限りました。ご了承のほどを…。

【懸賞部門】

◆大枚逃したで賞

勝っていれば手にしていたのに、負けたばかりに逃してしまった懸賞金。積もり積もれば、結構な額面になります。果たしていかほどか…。トップ3までは手取り(1本あたり3万円)で1000万円を超えています。

<1>遠藤=398本

<2>貴景勝=396本

<3>御嶽海=337本

<4>朝乃山=333本

<5>炎鵬=302本

取組が結びの一番やそれに近い番付上位や、人気力士には多くの懸賞がかかるもの。そこで負けると逃す本数も多くなります。

遠藤
遠藤

◆一獲千金賞

1本あたりの手取りは3万円。ここでは1番あたり100万円を超す懸賞(34本以上)がかかった相撲で、どんな結果が出たか調べてみた。1番あたり34本以上の懸賞がかかった取組は、今年5場所で8番。何と、そのうち7番が大関貴景勝絡み。実に6勝1敗と勝負強さが際立った。勝率で言えば、その貴景勝に優勝が懸かった初場所で勝った徳勝龍が10割(1勝0敗)だが、ここは貴景勝に軍配を上げよう。ちなみに朝乃山が1勝1敗で、この3人で8勝。0勝1敗は玉鷲、阿炎、宝富士、高安、正代、大栄翔。一獲千金を夢見て新年を…。

貴景勝
貴景勝

【取組時間部門】

◆相撲をこよなく愛したで賞

力士29人の1番あたり平均取組時間を算出。速く勝負を決めたい、と思うのが力士の本音だろうが、ケガを抱えたり、腰が重かったりとタイプによって、どうしても長くなりがちな力士の顔触れは、ここ数年変わらない。今年は

<1>高安=15秒6

<2>宝富士=13秒9

<3>志摩ノ海=12秒4

<4>竜電=12秒0

<5>豊山=11秒7

となった。記憶に新しい“お疲れ大賞”は、中盤まで優勝争いに参戦した11月場所の宝富士。9日目の隠岐の海戦は67秒8の熱戦を制し勝ち越し。だが95秒7かかった10日目の北勝富士戦は物言いがつき取り直し。その一番は16秒1だったが敗れて2敗目。竜電に送り倒された11日目の一番も80秒3かかった。物言いがついた一番を含め、3日間4番で4分を超える259秒9。この場所の宝富士の15番合計が282秒9だから90%以上を、この3日間で消化したことになる。本当にご苦労さまです。

高安
高安

◆踏んだり蹴ったりで賞

負けた一番あたりの平均取組時間の長かった力士は? 勝っていれば心地よい疲労感に包まれるところが、負けたばっかりにドッと疲れが押し寄せてきそうで…。“お気の毒大賞”は高安の16秒8。高安は勝った相撲も1位の竜電(15秒0)に続く2位(14秒6)と、勝っても負けても土俵に長くいた。

◆省エネ大賞

立ち合い、一瞬の変化、引き技で相手を土俵に這わせ、勝ち名乗りを受ける。もしくは一気の押しで勝負を決める。速く勝負を決めるのは気分がいいもの。1勝あたりにかかった平均時間で短いのは…。はたきといえばこの人、そう千代大龍で2秒8。不戦勝と不戦敗を除いた5場所全71番(34勝37敗)の平均もただ1人、5秒を切る4秒9。はたき込みの13勝は、29人の中で決まり手別トップ。「疾風(はやて)のように現れて、疾風のように去って行く<歌詞>」月光仮面のような力士です! ちなみに5秒台は玉鷲(5秒6)碧山(5秒8)の2人と突き押し相撲が上位。6秒台で正代、貴景勝の両大関が続いた。

大相撲11月場所 13日目 遠藤(右)をはたき込みで破る千代大龍山
大相撲11月場所 13日目 遠藤(右)をはたき込みで破る千代大龍山

【金さん銀さん部門】

ちょっと古いフレーズになりましたが…。平幕力士の横綱戦勝利は「金星」として公認されますが、大関戦勝利を“銀星”と勝手に決めて抽出しました。

金星は遠藤が3個でNO・1。初場所の連日獲得(初日鶴竜、2日目白鵬)が光りました。2位の妙義龍(2個)も初場所で3日目に白鵬、4日目鶴竜と、連日の金星獲得。思えば横綱災難の年の始まりだったようで…。金星は他に北勝富士、徳勝龍、阿武咲の各1個だ。

続いて“銀星”は…。これは今後の掲載でも触れると思うので、ここでは省略します。あしからず。

【珍手賞】

今年は寄り切り、押し出しはじめ36手の決まり手が出ました。そのうち「この決まり手で勝ったのは、この力士だけ」という唯一無二を調べました。昔はよく出ていて「珍手」というには抵抗がある決まり手もありますが、そこは目をつぶってご一読を…。

◆つり出し=栃ノ心

◆網打ち=照強

◆きめ倒し=北勝富士

◆掛け投げ=栃ノ心

◆外小股=照強

◆外掛け=豊山

◆送り投げ=霧馬山

◆上手ひねり=霧馬山

◆下手ひねり=遠藤

ちなみに多くの決まり手で勝った力士は…。これは紙面掲載でお楽しみを。

2020年1月15日 初場所4日目、炎鵬(上)は大関栃ノ心につり出しで敗れる
2020年1月15日 初場所4日目、炎鵬(上)は大関栃ノ心につり出しで敗れる

【アップダウン賞】

初場所から11月場所までの番付昇降の推移から、振れ幅の激しかった力士は…。

<1>高安=27枚

<2>徳勝龍=22枚

<3>霧馬山=21枚

<4>阿武咲、豊山=各19枚

この中でも心地よい「上昇気流」で推移したのが霧馬山。初場所の東前頭17枚目から9枚、6枚とジャンプアップ。7月場所の負け越しで2枚下げたものの、秋場所の巻き返しで再び東前頭筆頭まで上った。ただ、その11月場所は3勝12敗と大負け。再びの捲土(けんど)重来に期待します!

大関経験者の高安も、ケガの影響で関脇から東前頭13枚目まで一気に降下したが、そこから13枚上げて返り三役の「雨のち晴れ」? 徳勝龍は初場所の幕尻優勝で一気に15枚上げたが、その後は負け越し続きで7枚ダウンの「快晴のち雨」か? 押し相撲の阿武咲と豊山は振れ幅が激しい「ジェットコースター型」のようだ。

【労せずしてのごっつぁんで賞】

不戦勝の多い力士。ケガや病気の不戦敗力士を思えば手放しでは喜べないが、汗をかかずに貴重な白星を手にすれば内心、うれしくないはずがない。今年は不戦勝負が20番あり、特にコロナ禍後の7月場所6番、秋場所7番と、調整の難しさが如実に表れた。その中で、朝乃山、御嶽海、大栄翔が2番の“おこぼれ”にあずかった。場所のリズムが崩れ不戦勝翌日は難しい、と言われる中、不戦勝翌日の勝負で三者三様の結果が。朝乃山は2戦2勝、大栄翔は1勝1敗、御嶽海は2戦2敗となった。

【行司泣かせで賞】

土俵際、際どい勝負で行司軍配は…。そんな勝負に物言いはつきもの。今年5場所で、物言い勝負が多かった力士は…。

<1>北勝富士=6番

<2>大栄翔、徳勝龍=5番

<4>宝富士=4番

<5>遠藤、栃ノ心、豊山=各3番

北勝富士の内訳は「軍配通り○」=2番、「軍配通り●」=2番、軍配をもらったが差し違えで●=1番、軍配をもらったが取り直しとなり再戦も○。控えで協議の結果を待つのも、しんどいものです。

北勝富士
北勝富士

力士のみなさん、1年間ご苦労さまでした。日刊スポーツ大相撲担当一同、新年の活躍も期待しています。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)