2人にしか分からない絆がある。大相撲初場所の7日目に引退を発表した元関脇隠岐の海改め君ケ浜親方と、元関脇豪風の押尾川親方。押尾川親方の方が6歳上だが、巡業先などで見せた仲むつまじい姿は全く年齢の差を感じさせなかった。相撲ファンの間でもよく知られる存在だった2人の仲について、当人たちから聞いた。

出会いについて、君ケ浜親方の心に深く印象に残っている。若い衆の頃に参加した飲み会。偶然そこに居合わせたのが、当時既に関取だった豪風。父親が同じ秋田出身と伝えると、ひときわうれしそうにしていた。「その場でおやじに連絡したら、電話に代わって話してくれて」。粋な計らいもうれしかった。

押尾川親方は「別にみなさんが思うほど仲良くないですよ」と気恥ずかしそうにしながら、「トレーニングを見たいと言われて、一緒にしたこともありましたね。少しずつ力をつけていった姿を目の当たりにして、こうやって強くなるんだと意識する存在でしたね」。一緒に秋田へ訪れたり、場所後に飲みに行ったりと思い出が絶えない。かわいい後輩の引退会見にもこっそり姿を見せていた。

現役を退いた今、ともに親方として後進の指導に当たる。君ケ浜親方は「どんな稽古をしているのか見てみたいですね」。押尾川親方は「親方として一緒に盛り上げたい」。若い2人の親方が、今後の相撲界を引っ張る。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

引退会見で花束を受け取る隠岐の海(1月14日撮影)
引退会見で花束を受け取る隠岐の海(1月14日撮影)