IWGPヘビー級、同インターコンチネンタル2冠王者の飯伏幸太(38)が、挑戦権利証を持つジェイ・ホワイト(28)との激闘を制し、初防衛に成功した。

昨年11月に疑惑の判定で敗れ、権利証を奪われた因縁の相手に苦しめられたが、最後は必殺技カミゴェを決め、48分5秒に及ぶ戦いに終止符を打った。前日4日に内藤哲也(38)から死闘の末に奪ったベルトを守り、ついに「神」となった。

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飯伏がついに「神」の領域に到達した。ベルトを託した内藤の思い、“反則負け”で権利証を奪われたホワイトへの恨み、ファンへの感謝…。さまざまな思いを込め、カミゴェを顔面にさく裂させた。「小学校5年から本気のプロレスをやってきて本当に長かった。やっとこのベルトの重さが分かった」とかみしめた。

2冠王座を奪取した前日4日は内藤と30分以上戦っている。疲労困憊(こんぱい)の中、痛めた右足を集中的に攻められた。軽やかな動きは影を潜めたが、気持ちだけはベルトとつながっていた。中盤には、昨年11月に「疑惑判定」で敗れた時と同様、ホワイトがロープに足をかけた状態で抑え込まれた。あわや3カウントの危機も、今回はレフェリーがしっかり見ており、フォールを回避。何度もピンチを乗り越え、東京ドーム大会メインの最長となる48分5秒を戦いきった。

逆境にも動じない鋼の心を持つ。昨年1月の同大会では当時王者のオカダに敗れた。コロナ禍で3月から大会は延期。6月に無観客開催となったが「全く違和感はなかった」と平常心を保った。さまざまな団体を渡り歩き、路上など観客数人での興行も経験。「力を発揮できない選手もいる中、自分は違った。画面越しに見てくれる人がいる。クオリティーを落とさずにやれた」と自負する。

強靱(きょうじん)な肉体も進化を続ける。暴飲暴食だった時期もあったが、4年前からは、栄養学を勉強し、食事制限する。カロリー計算で、筋肉の付き方も変わってきた。体重93キロはジュニアの域だが「70キロでも120キロの選手に勝つことができるのが魅力」。この日も100キロのホワイトに臆することなく立ち向かった。

これまで東京ドームのメインを盛り上げてきた棚橋、オカダ、内藤がいない中、堂々とした戦いで東京ドームを締めくくった。勝利後、SANADAから対戦を要求され「僕ももっと試合がしたい。いつでもやりましょう」と余裕を見せた。今後はオカダの持つIWGP王座の12回防衛記録に照準を定め「13回を目指します」と意気込む。さらに「発言力が増したと思うので」と、2冠ベルトの統一も提案するなど、新王者はどこまでも貪欲だ。

「150歳まで生きる」と豪語する38歳。「神」の域に達した今後はどこまで進化し続けるのか。伸びしろは無限大にありそうだ。【松熊洋介】

○…飯伏はプロレス界発展のための活動にも興味を示す。16年から新日本に再入団する19年まで個人事務所「飯伏プロレス研究所」を立ち上げた。米WWEに自ら足を運ぶなどして極意を学んだ。今後は「飯伏プロレス工場を作りたい。研究はもう終わった。これからはもの(選手)を作り上げて、送り出したい」と野望も明かした。

◆飯伏幸太(いぶし・こうた)1982年(昭57)5月21日、鹿児島県生まれ。04年7月DDTでプロレスデビュー。09年新日本初参戦。11年にIWGPジュニアタッグ王座に輝く。13年DDTに加え、新日本にも加入。16年両団体とも退団しフリーに。19年4月新日本に再入団。4月に内藤からIWGPインターコンチネンタル王座を奪う。20年2月IWGPタッグ王者に。19、20年G1クライマックス連覇。所属ユニットは本隊。181センチ、93キロ。

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