彼は何者なのか? WWEインターコンチネンタル王者の「キング」中邑真輔(41)の横には、ギターを担いだ異色の男が立っている。ピンクのバンダナに口ヒゲ、ロングヘアを束ねた米国人レスラーのリック・ブーグス(33)だ。中邑の入場曲を生ギター演奏。中邑と観客を盛り上げながら試合出場も果たしている。第12回の「WWEの世界」は「キング」中邑をサポートするブーグスにフォーカスを当てる。

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今年5月、キングの王冠を装着した中邑の横に、ギターを持ったブーグスが突如、登場した。WWEで人気の中邑の曲「ザ・ライジング・サン」を生ギター演奏し、リモート応援するファンを熱狂させた。中邑がバロン・コービンから「キング」の称号と王冠を奪った時も、WWEインターコンチネンタル王座の2度目戴冠時も好サポートを続けてきた。コンビ結成から約4カ月が経過し、ついにスマックダウン大会で試合出場している。

米ウィスコンシン州フランクリン出身のブーグスはウィスコンシン大でレスリング選手として活動。WWEのトライアウトに合格し、17年10月にデビュー。NXTで活動を開始した。WWEによるポットキャスト番組でブーグスは「WWEのトライアウトが決まった時、仕事を辞めた。失業して退路を断った一方で長い間、妻ら家族には迷惑をかけた」と当時を振り返る。3年以上、NXTで試合を重ね、NXTタッグ王座にも挑戦するなど経験を積んできたが、ヒザの故障で20年3月7日のNXT大会の試合を最後に戦線離脱。これが現在のキャラクターとなる転機だったという。

ヒザ故障は半月板損傷を含めた重傷だった。回復までには6~9カ月間は必要と診断された。ブーグスは「リハビリ中、プロモーションやキャラクターを作り込む作業しかできなかったのでどう目立つかを考えていた。目立つように口ひげ、ピンク色のヘアバンド、ロングヘアにしました。自分の鎖を解き放つしなかった」と明かした。そして負傷から1年以上が経過した21年5月、スマックダウンに登場。中邑の入場曲をギター演奏し、サポートする役目でチャンスを得た。

NXT時代はジョセフ・アベレージのリングネームで24/7王座を2度戴冠経験しているが、負傷も重なってロウ、スマックダウン昇格のチャンスに恵まれなかった。しかし中邑のサポート役として登場後、自らのポジションを得た。中邑とのコンビでタッグ戦にも出場して勝利。9月3日のジャクソンビル大会では元WWE世界ヘビー級王者ドルフ・ジグラーとのシングル戦でも勝利するなどレスラーとしてテレビマッチに出場している。

もともとレスラーだけでなく、12年からユーチューバーとしても活動。フィットネスやウエートトレーニングをコメディータッチで紹介している。「レスリングで世界一になっても、どれぐらいのお金を稼げるのか? 五輪金メダリストでも、素晴らしい代理人がいなければ金持ちにはなれない。将来的にスポーツエンターテインメントを追求するのではないかと思っていた」と言い切る野心家。中邑と行動をともにすることで、夢を実現しようとしている。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)

◆リック・ブーグス 1987年10月19日、米ウィスコンシン州フランクリン生まれ。本名エリック・ブーゲンハーゲン。ウィスコンシン大までレスリング選手。12年ロンドン・オリンピックの予選にも出場し、母校ではレスリング部のコーチも務めた。17年にWWEと契約し、同年10月にNXTでプロデビュー。24/7王座を2度戴冠。185センチ、106キロ。