オカダ・カズチカ(33)が14年大会以来7年ぶり3度目のG1制覇に王手をかけた。

Bブロック最終戦で、首位争いを繰り広げてきた宿敵ジェフ・コブとの直接対決を制した。最近はタイトル戦線から遠ざかるなど、停滞気味だったが、健在ぶりを示した。21日の優勝決定戦(東京・日本武道館)でライバル飯伏幸太と対戦。7年ぶり優勝で完全復活を証明する。

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武道館に降らせたカネの雨が、絶対王者の復活を印象づけた。「負けるつもりで出ていない」と臨んだ9月19日初戦から32日。開幕7連勝を果たすなど、Bブロックをけん引してきた男が、悲願達成へあと1勝に迫った。「ワクワクして寝られない。皆さんもワクワクしてください」と笑顔を見せた。

心身の状態は決して万全ではなかった。弱音をはかない男だが、シリーズ中に「きつい」と漏らすなど満身創痍(そうい)を隠さない。今大会無敗を誇る怪物コブに何度も3カウントを奪われそうになった。それでも、9月のメットライフドーム大会で屈辱を味わわされた宿敵に、不退転の覚悟で立ち向かった。最後は魂のレインメーカーをさく裂。23分の死闘を制し「武道館!」と絶叫した。

G1制覇からは7年遠ざかる。歴史あるIWGPヘビー級ベルトの最多連続防衛記録(12回)も持つが、20年1月に内藤に奪われて以来取り戻せていない。30歳を超え「積み重ねたダメージがちょっとずつ出てきた」と体の変化を気にかけるようになった。暴飲暴食をやめ、脂質を意識した食事に改善。コロナ禍でも「しっかりパフォーマンスを出せるように調整するのがプロ」と体調管理を見直した。

今年5月に新型コロナウイルスに感染し、6月には鷹木のIWGP世界ヘビー級ベルトに挑戦もはね返された。それでも、自暴自棄に陥らず高いモチベーションを維持し続けたことで、どん底からはい上がった。

今年3月には、飯伏の要求でIWGPヘビー級と同インターコンチネンタルが統一。その価値を一番知る男に不満はあったはずだが「強いヤツがベルトを巻いて好き放題やればいい」と、感情を押し殺した。21日の優勝決定戦で飯伏を破れば、IWGP世界ヘビー級王者鷹木への再挑戦権を得る。万雷の拍手を背に、超人レインメーカーが突き進む。【勝部晃多】

◆オカダの対飯伏戦 シングルの対戦成績は3勝2敗。ともにデビュー04年の同期だが、飯伏は14年までジュニアだったため、対戦機会は少なかった。シングル初対戦の13年8月と、2度目の14年3月はオカダが勝利。G1では19年に対戦して敗れ、同点ながら優勝決定戦進出を逃した。20年も同ブロックで対戦し、敗戦。タイトルマッチでは、昨年1月のIWGPヘビー級選手権試合で勝利し、5度目防衛に成功。

◆G1クライマックス 91年から始まった、ヘビー級選手によるシングルのリーグ戦。これまでは夏に行われていたが、コロナ禍により、昨年、今年と秋開催となった。20選手がA、Bの2ブロックに分かれ、総当たり戦(勝ち=2、引き分け=1、負け=0)を行い、1位同士が21日(日本武道館)に優勝決定戦を戦う。優勝すれば、鷹木の持つIWGP世界ヘビー級王座に挑戦する流れとなっている。最多優勝は蝶野正洋の5回。