母国ウクライナを愛するボクシングの新旧世界王者もロシアの侵攻に悲痛な声を上げた。4団体のヘビー級王座を独占したクリチコ兄弟の兄ビタリ氏(50)は14年から首都キエフ市長を務めており「私に他の選択肢がない。やるしかない。私は戦うだろう」と出演した英ITVの番組で強調。警察、軍隊と協力し、市民の電力、ガス、水などの供給確保を最優先事項とし、市民を守る考えを示した。

市民が兵士としてキエフを守る準備も進めていると口にし「私の国を信じ、そして私の人々を信じている」とも強調。元3団体(WBA、WBO、IBF)統一同級王者の弟ウラジミール氏(45)は今月上旬、予備軍に入隊したとし「ウクライナの人々は強い。恐ろしい試練の中、主権と平和を切望する人々だ」とSNSに投稿した。

同国出身の有名現役ボクサーたちも平和を求める声を挙げた。3団体(WBA、WBO、IBF)統一同級王者オレクサンドル・ウシク(35)はイベント出席先の英国から帰国したとSNSで報告。「多くの人が私が逃げたと言いましたが、私は戻った。家にいる。非常に困難な時期だが、団結する必要がある」と動画で訴え「NO WAR」とつづった。また元3団体統一ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(34)もウクライナとロシアの国旗カラーで彩られた両手で平和の象徴となるハトをつくるイラストをSNSに投稿。「全世界の人々の平和と真理を祈る」とつづった。

◆クリチコ兄弟 ウクライナ出身の巨人兄弟でヘビー級4団体を独占した。身長203センチ、体重111キロの兄ビタリがWBC王者、198センチ、110キロの弟ウラジミールが3団体(WBA、WBO、IBF)統一王者だった。先にビタリが99年にWBO、04年にWBC王座獲得し05年に1度引退。96年アトランタ五輪スーパーヘビー級金メダリストのウラジミールが00年にWBO、06年にIBF王座を獲得。その後、現役復帰したビタリが08年にWBC王座を再奪取。11年にウラジミールがWBA王座も獲得し、兄弟で4団体で同一階級のベルトを保持した。