前王者で同級1位の寺地拳四朗(30=BMB)が、大胆なスタイル変更でベルトを奪還した。王者矢吹正道(29=緑)と昨年9月以来となる因縁の再戦。本来は距離をとる寺地は、開始直後から間合いを詰めるインファイトでペースを握り3回1分11秒、右ストレートでKO勝ちした。引退も考えた元安定王者が、過去をかなぐり捨ててベルトを取り戻した。寺地は19勝(11KO)1敗、矢吹は13勝(12KO)4敗となった。

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無情の10カウントを聞いた。矢吹は、ふらつく足で立ち上がったが、ファイティングポーズがとれない。レフェリーが10を数え終わって、3回KO負け。ワンパンチでベルトを失った。

「あんなにインファイトしてくると思わなかった」

作戦負けだった。開始から被弾覚悟の寺地に距離を詰められた。足を使う相手を追い詰める練習が無駄になった。時折、強烈なアッパーを繰り出したが、前進を止められない。3回に左ボディーフックを被弾。接近戦を嫌がってバックステップを踏んだ直後、がら空きのあごを打ち抜かれた。「(相手の)フットワークをつぶす作戦やったんで、それがいきなり狂ったのが一番デカいですね」。

昨年9月に王座奪取も、バッティング騒動でWBCから再戦指令が出た。「ケチをつけられたのもあるが、もう1度決着をつけたかった。当たって砕けるつもりでアグレッシブにいきたい」。アグレッシブに来たのは前王者の方だった。

「右も一発も打たずに終わりましたね。(寺地は)あのスタイルやったら、ずっと防衛できると思いますよ」と潔く負けを認めた。今後について「わからないです。今回にすべてをかけていたので」とうつむきがちに言った。【益田一弘】