元ノルディックスキー・ジャンプ選手が異例の転身を果たす。ボクシングスーパーフェザー級の黒川暁稀(としき、25=北海道畠山ジム)が29日「La Fiesta del Diamante Vol・2」(大阪・堺市)でプロデビュー戦に臨む。北京オリンピック(五輪)ノーマルヒル金メダルの小林陵侑や平昌五輪銅メダルの高梨沙羅とは同期。ジャンプ界のチャンピオンたちに負けず、ボクシング界のチャンプを目指す。

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黒川がプロボクサーとしての第1歩を踏み出す。21年4月にプロテストに1発合格し、念願のデビュー戦を迎える。練習は追い込みに突入。「楽しみ半分、不安半分という感じ。試合までにしっかり仕上げていけたら」と集中する。

ジャンプ選手からプロボクサーへ、名前どおり“稀”な転身だ。余市黒川小3年からジャンプに打ち込み、飛び続けてきた。札大2年時からオフシーズンのトレーニングとしてボクシングを始めた。大学時代に好成績が出せず、卒業と同時にジャンプを引退した。約2年サラリーマン生活を送り、スポーツからは離れた。だが20年末の畠山会長との再会をきっかけにボクシングを再開。同会長が「身体能力がズバ抜けている」と認める才能で、約4カ月で感覚を取り戻してプロの仲間入りを果たした。

ジャンプ選手時代の同期、小林陵や高梨は世界で活躍する。北京五輪もテレビで見て「感動した。今までずっと近くで見ていたので、じわっと熱くなった」。96年組のLINE(ライン)グループにはまだメンバーとして入っている。だが、自身は違う世界での頂点を目指すと決めた。「ジャンプはしっかり諦めた。次に向けて頑張れたら」と挑戦する。

左利きのファイタータイプ。左ストレートに自信を持つ。ジャンプで鍛えた下半身、体幹の強さ、瞬発力はボクシングにも生きている。「ガンガン攻めてパンチを当てて倒せたら」。K点越えならぬKO勝ちが理想だ。【保坂果那】

▼黒川のジャンプ時代の同期、小林陵侑がエールを送った。昔を思い出しながら「小さい頃からめっちゃ足が速くて、ジャンプもうまかった」と振り返る。プロボクサーデビューの話は聞いており「別の道で目標を持って続けられるのはすごいこと。絶対勝ってほしい。KOしてください」と願っていた。

◆黒川暁稀(くろかわ・としき)1996年(平8)4月17日、余市町生まれ。余市黒川小3年から余市ジャンプ少年団でジャンプを始める。余市東中-余市紅志高-札大。札大2年からボクシングを始める。21年4月プロテスト合格。スーパーフェザー級。168センチ。家族は両親と妹2人、弟2人の5人きょうだいの長男。