来春での引退を表明している武藤敬司(59)が代理人を務めるグレート・ムタが、大阪の地に敵味方なしの大魔界を作り上げた。

32年前の1990年9月にサムライ・シロー(越中詩郎)戦で、日本初登場を果たした大阪。その思い出の地でのファイナルマッチは、新日本プロレスのグレート・O・カーンと「魔界・帝国同盟」を結び、NOSAWA論外を加えたトリオで、反骨集団「金剛」(拳王、征矢、タダスケ)と対戦した。

青と紫を基調としたコスチュームでスモークをたっぷりにまとって登場すると、会場はこの日一番の拍手に包まれた。試合は、先発したO・カーンからタッチを受けて、リングインを果たすと、天に向かって緑の毒霧を3度噴射するムタ流の“ごあいさつ”からスタート。そして、征矢とグラウンドの攻防を演じた。

中盤には、試合そっちのけでリングサイドを徘徊(はいかい)し始めると、リング下を物色。最前列のファンを威嚇して小型の扇風機を奪うと、涼しそうに風を浴びる傍若無人ぶりを披露した。

やりたい放題のムタは止まらない。O・カーンがタダスケの頭を舌でなめているのを見ると、たまらずに乱入し、なぜか味方のO・カーンの頭をガブリ。その後は、場外のケーブルでタダスケを絞首刑に処すなど、暴れまわった。

最後は拳王の背後から火炎攻撃を浴びせると、征矢に赤い毒霧を噴射。タダスケに閃光(せんこう)魔術を決めると、最後は23分13秒、味方のO・カーンがタダスケをエリミネーターで仕留めた。

しかし、魔界ワールドの極め付きはラストだった。勝ち名乗りを受けているO・カーンの背後から登場したムタは、同盟を結んだはずの相手になぜか緑色の毒霧を噴射。パニックに陥った帝国の支配者を尻目に花道を引き揚げると、首切りポーズで、O・カーンにも大阪のファンにも「さよなら」を告げた。

ムタの代理人の武藤は、来年1月22日の横浜大会(神奈川・横浜アリーナ)を最後に、魔界の扉が閉ざされることを表明している。アメリカ生まれの悪魔忍者が、魔界に帰る日が近づいてきた。