ボクシングWBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)が、元世界6階級制覇王者マニー・パッキャオ(フィリピン)の出世ジムを拠点に、自身初の米スパーリング合宿を敢行した。6日から元WBC世界同級暫定王者の弟拓真(26=大橋)らと米ロサンゼルスに入って約2週間、実戦練習。18日に帰国した井上はパッキャオが調整したワイルドカードジムで世界ランカーらと計28回のスパーリングを消化したと報告した。

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収穫たっぷりの表情で井上が米国から帰国した。父真吾トレーナー、元世界3階級制覇王者八重樫東トレーナーのもと、弟拓真、元日本、WBOアジア・パシフィック・スーパーライト級王者のいとこ浩樹らと約2週間、米ロサンゼルスに滞在。パッキャオとタッグを組んできた名伯楽フレディ・ローチ・トレーナーの経営するワイルドカードジムを拠点に世界ランカーら6人と計28回のスパーリングを消化してきた。

自身初の米実戦合宿を終えた井上は「初日にジムへ行った時にたくさん(パッキャオの)写真が飾ってあったので見ました。ローチさんとも少し話したり。向こうの選手を含め、トレーナーや関係者の見ている中でスパーリングしたのは刺激的でした」と声をはずませた。WBA世界スーパーバンタム級1位アザト・ホバニシアン(アルメニア)らトップ選手たちと拳を交えた実戦練習は「日本に(パートナーとして)呼ぶことができないような選手たちとのスパーで充実しました」と手応えを示した。

12月に首都圏開催予定で計画されるWBO世界同級王者ポール・バトラー(33=英国)との4団体王座統一戦の交渉が大詰めに入っている。今回もバトラーと似た動きの元北米連盟フェザー級王者アダム・ロペス(米国)ともスパーリングを続け「毎回気が抜けないような相手でした」と触発されていた。

今後は国内でのスパーリング調整に入る。所属ジムの大橋秀行会長から海外パートナーを呼んでもらう予定で、パトラー戦決定の朗報を待ちながら実戦練習を続ける方針だ。井上は「また米国で試合する時の予行演習にもなりました。ところどころで米国合宿もありだなと思う。(スパーリング)パートナーに困らないし、いいと思う」と今後の米合宿にも前向きな姿勢だった。【藤中栄二】

◆日本人世界王者の複数団体王座統一メモ 国内の2団体統一王者は過去4人。12年にWBC世界ミニマム級王者井岡一翔がWBA世界同級王者八重樫東を下し、WBA、WBC世界同級統一王者となったのが国内初。以後、ミニマム級で高山勝成がWBO、IBF両王座を統一、ライトフライ級で田口良一がWBA、IBF王座を統一した。バンタム級では井上尚弥が19年にWBA、IBF王座を統一し、今年6月にノニト・ドネア(フィリピン)を下して日本人初の3団体統一王者となった。

◆パッキャオ出世メモ 98年12月にWBC世界王者となった後、2度目の防衛戦で体重超過して王座剥奪され、試合も3回KO負け。その後、3階級上のスーパーバンタム級に転向し、6連続KO勝ち後に渡米。フレディ・ローチ・トレーナーと出会った。同氏の推薦もあって代役挑戦者として01年にIBF世界同級王者レドワバ(南アフリカ)に挑戦し6回TKO勝利して2階級制覇に成功。同氏が経営する米カリフォルニア州ハリウッドにあるワイルドカードジムで調整し、6階級制覇王者となった。

〇…現日本、WBOアジア・パシフィック・スーパーバンタム級王者で元WBC世界バンタム級暫定王者の弟拓真は米合宿で計27回のスパーリングを積んだ。国内で臨む1日の回数よりも長い6回を1日おきに取り組み「いつもジムでやっている感じではない、良い緊張感でやれたと思う。次戦に向けて準備段階で、これから仕上げていけたら」と自信をみなぎらせた。12月開催予定の兄尚弥の次戦と同日同会場で防衛戦が組まれる見通しとなっている。