WBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級井上尚弥(29=大橋)が史上9人目の4団体王座統一に成功した。

WBO世界同級王者ポール・バトラー(34=英国)との4団体王座統一戦に臨み、11回1分9秒、KO勝ち。世界ベルト4本をまとめる日本初、アジア初、バンタム級初の快挙を成し遂げた。なおWBA王座8度目防衛(IBF6度目、WBC初)となり、WBO世界スーパーフライ級王者時代の7度を抜き、自己最多防衛となった。

 

“モンスター”井上が、日本で、アジアで、階級で初となる4団王座統一の偉業を成し遂げた。

実力が違いすぎた。井上は中盤、両腕をだらりと下げた。さらに後ろに引くそぶりもみせた。カメのように守りを固め、攻めてこない相手をノーガードで挑発した。11回に強烈な左ボディーから連打。初ダウンのバトラーは起き上がれなかった。

「泰然自若」だった。12日の前日計量。突然の体重計変更という相手陣営の「陽動作戦」で、自身初の計量ミスに見舞われたが、約5分後の2回目計量でクリア。「計量ミスは初でいいじゃないですか。小ネタをはさんで」と、統一王者らしく余裕の笑みを浮かべていた。

プロ転向後初の「出げいこ」で戦闘モードのスイッチを入れた。行き先は米ロサンゼルス。自ら希望した初めての海外スパーリング合宿だった。元世界6階級制覇王者マニー・パッキャオらを育成した名伯楽フレディ・ローチ氏が運営するワイルドカードジムを拠点に2週間滞在。WBA世界スーパーバンタム級1位アザト・ホバニシヤン(アルメニア)らトップの世界ランカーとスパーリングを消化した。ローチ氏や世界トップ級の選手の「目」の視線を浴びながらの緊張感ある実戦トレは、大きな刺激になったという。

「トレーニングの内容どうこうではなく、とにかく環境を変えたかったので良い緊張感を保てましたね。ボクシングに対する『感覚』がすごく伸びました」と手応え。所属ジムが招聘(しょうへい)したフィリピン人パートナーを実戦トレ初日から倒す勢いがあった。元世界3階級制覇王者田中恒成(畑中)とのスパーリングし、最後はWBC世界バンタム級暫定王者の弟拓真との兄弟スパーリングで総仕上げ。「バッチリです。いいイメージでリングに上がれれば」と自信に満ちあふれながらバトラーと対峙(たいじ)していた。

「バンタム級最終章」と銘打った大一番を制し、同級最強を国内外に証明できた。「バンタム級は適正階級」としながらも、鍛え抜いた肉体は大きくなっているのも事実。すぐにスーパーバンタム級に転向することが濃厚で、同級での世界戦線をにらみながら、世界戦のチャンスを待つ。23年は井岡一翔に続く、日本人2人目の世界4階級制覇を目指す。