プロボクシングWBA世界スーパーフライ級王者井岡一翔(34=志成)が世界5階級制覇を目指すと初めて宣言した。31日、東京・大田区総合体育館で同級8位ホスベル・ペレス(28=ベネズエラ)との初防衛戦を控え、日刊スポーツの単独インタビューに応じた。熱望する同級最強のWBC王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(33=メキシコ)との統一戦、5日違いで世界戦に臨むWBC、WBO世界同級王者井上尚弥(30=大橋)についても言及した。その上編となる。【取材・構成=藤中栄二、首藤正徳】

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

12度目の大みそか参戦は希望したWBC王者エストラーダとの2団体王座統一戦ではなかった。急きょ初防衛戦に切り替わった際の心境を口にした。

井岡 自分の気持ちと現実を照らし合わせた時に僕は止まりたくなかった。大みそかに試合できるチャンスがあるなら試合したいと思いました。もちろんエストラーダ選手との統一戦は望むべき試合で、理想ではある。しかし、それがすべてか?と言うとボクシング人生は、それがすべてではない。世界王者として戦わないといけない。なので、ぐっと感情、気持ちを抑えながらも、すぐに「大みそかに試合します」と言いました。

30歳代に入ったここ数年、井岡は年に2戦ペースで試合したいと語ってきた。

井岡 年明けすぐにエストラーダ選手とできるかは分からず、待っても対戦が保証されていない中で時間を過ごすより、今できることに力を注ぎたいと思いました。年2試合ペースもそうですし、歩みを止めたくない。まだまだ挑戦しないといけない。待つ、というより切り開いていかないといけないというマインドでした。

11月27日の初防衛戦発表の記者会見では「家族で年末を過ごすことも頭によぎった」との発言もあった。

井岡 エストラーダ選手と年明けも交渉が続き、やれる可能性があるなら無理に大みそかを戦う意味があるのかなと。防衛戦はリスクがあるし、(オンラインで会見出席した)挑戦者は世界戦を喜んでいました。そういう現状の中でやらないといけない試合になる。自分の中で選択肢として2023年の大みそかは人生で1回。やらない後悔よりやる後悔ではですが、やってみたいと。家族とゆっくりするのは引退してもできること。今年の大みそかに戦う決断をしなければ、その日は戻ってこないので、戦いたいと思いましたね。

スーパーフライ級最強と言われるエストラーダとの対戦希望は一時引退していた18年から約5年間、思い描いてきた。

井岡 この階級で世界的に知名度があり評価が高いのはエストラーダ選手。僕が1度引退し、米国で(軽量級の祭典)Superfly2を見に行った時、(エストラーダに)軽い衝撃を受けた。もう1度、この世界と戦うのであれば、こういった場所で評価を得た彼に勝つことで、世界王者の肩書を超えた景色だったり、大きなものを感じられるのではないか。そこから彼を試合したいと思い始めましたね。

昨年大みそかの井岡-フランコ戦にはエストラーダもリングサイドで視察していた。今回は条件面で折り合わなかったが、希望する同級最強ボクサーとの統一戦は近づきつつある手応えは持っている。

井岡 去年の大みそか、彼が日本に来てくれて現実的になったと思う。対戦が実現すれば、よりドラマがあるようなシーンにしたい。僕が現役の世界王者として、ボクサーとして世界最高の舞台で戦えているだけで正直、十分ではあるけれど目指していたもの、思いというものは、実現するんだと自分にも周りの人にも感じてもらいたいので、実現したいと思っている。

日本人初の世界4階級制覇を達成し、プロとしての目標は120%達成と言ってもいい。しかし井岡は歩みを止めない。初めて世界5階級制覇に挑戦する意思を表明した。

井岡 自分でも、どこまでいけるか分からない。分からないけれど「僕が5階級制覇挑戦します」と言えば挑戦は実現するわけじゃないですか。その切符を持っているので、それを持っている以上はやりたい。いけるところまでいきたい。今は自分だけでなく、人それぞれ可能性があるという素晴らしさを伝えたい。自分ができたことで、少しの気づきや行動で、いろんなことが変われるというのを今は伝えたいし、自分の行動や挑戦で次の世代の人達に伝えたいです。(下編に続く)

◆井岡一翔(いおか・かずと)1989年(平元)3月24日、大阪・堺市生まれ。興国高で史上3人目の高校6冠を達成。東農大2年中退で09年プロデビュー。11年に当時日本最速7戦目でWBC世界ミニマム級王座、12年にWBA世界ライトフライ級、15年に18戦目の当時世界最速でWBA世界フライ級王座獲得。17年に1度引退も18年に復帰。19年再挑戦でWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、日本初の世界4階級制覇を達成。23年2月にWBO世界同級王座を返上し、同6月にWBA世界同級王座を獲得。163・5センチの右ボクサーファイター。家族は夫人と2男。

【単独インタビュー】井岡一翔が井上尚弥に異例の言及「記録は彼が全部上回ると。どうでもいい」