武尊(32)がアジア最大級の格闘技団体ONEデビュー戦で涙した。ONEフライ級キックボクシング世界王者のスーパーレック・キアトモー9(28=タイ)と壮絶な打ち合いを演じたが、判定0-3負け。戴冠はならなかった。第3Rには渾身(こんしん)の左右連打をたたき込み、王者をKO寸前まで追い込んだが一歩及ばず。試合後には、リング上で目を赤くし「これ以上、体をつくれません」と限界まで追い込んでの結果だったと明かした。

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本当にあと1歩だった。武尊が3Rにギアを上げた。スーパーレックをコーナーに詰めて左右ボディーの連打。さらに王者の頭が垂れてきたところに力いっぱいパンチをたたき込んだ。KO寸前まで追い込んだが仕留めきれずに判定負け。悔し涙を流し「今、僕ができる限界がここまでです」と正直な気持ちを吐露した。

スーパーレックが「3Rの最後は危なかった。ほとんど気持ちだけで立っていた」とホッとした様子で振り返ったほど、追い詰めた。しかし、試合巧者の王者は続く4、5Rは前蹴りで突き放し、細かいパンチでポイントを稼いだ。判定では挑戦者に勝ち目がないのは明らかだった。

武尊は試合後、能登半島地震に言及し「つらい思いをしたり、苦しい思いをしている人はたくさんいると思う。僕が命がけで戦って、パワーを与えて、頑張れば良いことあるって見せたかったんですけど…」と悔しさをにじませた。その後は検査のため、病院に向かった。

22年6月に那須川天心に敗れ、休養。昨年6月にパリでISKA世界スーパーライト級王者ベイリー・サグデンを倒し、復帰戦を飾った。今月14日にK-1時代のライバル大雅がRISEスーパーフェザー級王座を獲得した際は、試合前に「気合入れろ」とLINEでエール。試合後はSNSに「大雅おめでとう、パワーもらった! 俺も獲る」と記した。この日、大雅もリングサイドで武尊の戦いを見守ったが、寸前でベルトに届かなかった。【千葉修宏】

◆武尊(たける)1991年(平3)7月29日生まれ、鳥取・米子市出身。小学2年で空手を始め、高校退学後にキックボクシングジムに通いはじめ、通信制高校に再入学。11年9月にプロデビュー。15年4月にK-1ワールドGPスーパーバンタム級王座決定トーナメント、16年11月に同フェザー級、18年3月に同スーパーフェザー級で優勝し史上初の3階級制覇。22年6月那須川天心戦では判定0-5で敗れた。168センチ、61キロ。

【ONE165】武尊ベルト奪取ならず スーパーレック・キアトモー9に判定負け/ライブ詳細