「田中兄弟」の快挙を国技館に刻む。24日に東京・両国国技館で行われるボクシングのトリプル世界戦の前日計量が23日、都内で行われた。WBO世界スーパーフライ級王座決定戦で日本選手3人目の4階級制覇を狙う同級1位の田中恒成(28=畑中)は52・0キロでクリア。兄の亮明(りょうめい、30)が東京五輪でフライ級銅メダルを獲得した同じ舞台で挑む。WBC世界バンタム級タイトル戦で3階級制覇を狙う同級1位の中谷潤人(26=M・T)、WBA同級王座の初防衛戦に臨む井上拓真(28=大橋)も一発パスした。

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目が血走っていた。計量後の写真撮影で恒例の「フェースオフ」。田中は同級2位クリスチャン・バカセグア(26=メキシコ)への距離をグイと詰め、圧をかけるようににらみつけた。終わった後は握手を交わすなど友好的な対応も、「フェースオフってあんなもんでしょ」と“先制パンチ”の意図を含ませた。

田中にとって世界戦の舞台は4階級制覇をかけて戦い、初黒星を喫した20年大みそかの井岡一翔(志成)戦以来、約3年2カ月ぶりとなる。世界戦前の恒例行事を終え、「久々だなと。これだけ世界王者でない期間も初めてなんで」。日本選手最速5戦目でWBOミニマム級王座を獲得し、8戦目でライトフライ級、12戦目でフライ級と最速で3階級制覇の超エリートにとって長すぎる空白だった。

舞台の両国国技館は初めてだが「田中家」にとっては意味深い。兄亮明が東京五輪で同級61年ぶりのメダルを獲得した。当時はコロナ禍による無観客開催で田中も現地での応援はかなわなかったが、心に深く刻まれている。「後でメダルを触らせてもらったが、こんなに重いんだと。兄がメダルをとった場所で自分も4階級制覇に挑戦できる。兄弟にとって忘れられない場所になる」と言った。

史上最速21戦目での4階級制覇へ自信だけがみなぎる。「激しい試合になると思う。相手が打たれ強いとかダウンした経験がないとか関係なく、俺がKOしたいからKOで勝ちたい」。

ベルトを奪った先にはWBAスーパーフライ級王者井岡もターゲットに含めた統一戦。元世界王者の畑中清詞会長(56)は「俺は5階級、6階級も見据えている」。壮大な夢と可能性を拳に込め、田中が3年2カ月ぶりの大舞台に上がる。【実藤健一】