WBC世界バンタム級1位の中谷潤人(26=M・T)が日本男子7人目の世界3階級制覇を成し遂げた。同級王者アレハンドロ・サンティアゴ(28=メキシコ)に挑戦し、6回1分12秒TKOで破り王座獲得に成功した。WBO世界フライ級王座、WBO世界スーパーフライ級王座はいずれも決定戦。初めて王者に勝利し、世界王座を獲得した。これで井上尚弥(大橋)、田中恒成に続き、日本男子3人目の全勝での世界3階級制覇となった。

13センチの身長差と絶対的なリーチ差をいかして序盤から優位に戦った。4回を終えた公開採点では3人のジャッジが40―36でリードした。その後も要所で左ストレートを打ち込み、ポイントを稼いだ。6回にはワンツーで1度目、右フックで2度目のダウンを奪い、レフェリーストップに追い込んだ。無敗のまま世界3階級制覇を成し遂げた。

「この試合に向けて死ぬ思いで頑張ってきた。(これからも)みなさんの期待に応えられる熱いファイトをしていきたい」

バンタム級転向初戦でつかんだ世界挑戦のチャンスで「一発回答」を出した。サンティアゴは昨年7月、元世界5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)を判定で下した勢いある王者。「自分の中でもターニングポイント」と設定した挑戦だった。スーパーフライ級から1階級上げ、減量が1・4キロ分軽減したことも大きい。身長172センチ。限界に近い減量苦から少し解放され「体にエネルギーがすごくたまっている」と表現し、心身ともに充実した状態で決戦のリングに立っていた。

昨年5月、米ラスベガスでWBO世界スーパーフライ級王座決定戦では元世界王者アンドルー・モロニー(オーストラリア)を失神に追い込む12回TKO勝ちを収め、本場・米国のファンに存在感を示した。米スポーツ局ESPNや創刊100年以上の歴史と権威を誇る米老舗専門誌ザ・リングなどで23年の年間最優秀KO賞にも選出。国内外からの注目度も高まりつつあることを認識している。米国では「モンスター」4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(30=大橋)に続く存在として「ネクスト・モンスター」とも言われる。中谷は「勝ち方、内容でも期待に応えて、未来を開いていく」とと新たな自信を積み上げてサンティアゴ戦に臨んでいた。

会場となった両国国技館には思い出がある。13年4月、WBC世界バンタム級王者山中慎介(帝拳)が同級1位だった元WBC世界フライ級王者マルコム・ツニャカオ(フィリピン/真正)と3度目防衛戦(12回TKO勝ち)に臨んだ興行を観戦。「山中さんの応援団が太鼓をたたいていて、活気ある雰囲気でした」と振り返る。辰吉丈一郎、長谷川穗積、山中、井上尚弥らが巻いてきた緑色のWBC世界バンタム級王座ベルト。中谷は「あこがれがある。日本人の歴史があるタイトル。両国で狙えるのはロマンがあります」と強い決意を胸に秘めながら、思い出の両国で3本目の世界ベルトをつかんでみせた。