歴史に残る白星へ、今場所初めて右に動いた立ち合い。「今日は離れた勝負になると思った」と四つに組まず、のど輪で攻め立てた。何度も食い下がる高安を先手先手で攻め立てて、最後は右のおっつけで押し倒した。通算勝利単独1位の達成に「いい相撲だった。喜びは昨日より倍増したかな」。千代の富士と魁皇に並んだ時は「並んだときの方がうれしいね」と話していたが、だれも到達していない領域に踏み込んだ喜びはなお格別だった。

 入念な体作りが実を結んだ。名古屋入り前に、滋賀・長浜で3泊4日の合宿を行った。稽古場で汗を流すのは2時間程度だが、それとは別に稽古をしていた。住宅街にある宿舎近くの小さな公園で約1時間、四股を踏むなど体を動かした。近所の住民は「毎日やってますよ」と驚いていた。「場所前に体いじめてましたから」。数々の記録を打ち立てても、おごることなく、精進を続けてきたからこそ、今がある。

 次の目標も明確だ。支度部屋では「今日はとりあえずおとなしくしたい」と冗談交じりで答えた。だが、魁皇に並んで迎えたこの日の朝稽古で、はっきりと口にした。「ふと思ったのは幕内1000勝と北の湖さんの63場所」。1000勝まではあと46勝。歴代1位の北の湖にはあと3場所で並ぶ。2場所連続優勝も目前に迫る。白鵬の挑戦はまだまだ終わらない。【佐々木隆史】

 ◆八角理事長(元横綱北勝海)のコメント 誰も勝ったことのない数字。立派です。白鵬はこれ(記録)を目標にやってきたと思う。この記録は通過点。残り2日も気持ちを切らさないでほしい。今日の相撲でも、離れても自分の方から動いて攻めていた。安定している。