勝った方が幕下優勝の一番は、元十両で西10枚目の栃飛龍(30=春日野)が同49枚目の霧馬山(21=陸奥)をはたき込みで破り、初優勝を決めた。さらに、来年初場所での十両復帰も確実にした。

 立ち合いでは左の変化を選んだ。「左の上手を取られたくなかった。朝、岩友親方(元前頭木村山)に相談したら『2歩目で対応できる立ち合いがいいぞ』と言われて、距離ができれば手が出せると思った。あれで決めようとは思っていなかったんです」。変化を予想できずに突っ込んできた霧馬山をあっけなくはたき込み。優勝を手にした。

 勝てば十両復帰が見えた一番。それでも緊張はなかった。「ボーナスゲームだと思っていた。珍しく緊張しなくて、自然体だった。これでダメなら仕方ないと」。だから、勇気のいる変化も選べた。

 元十両も、15年初場所を最後に幕下生活が続く。3年間を振り返って「途中で腐りそうになった。何回もチャンスを逃した。でも、応援してくれる人がいるので頑張れました」。関取時代の締め込みや化粧まわしは、部屋の地下に保管されている。「一応、カビが生えていないか確認しています」。関取が着ける白色の稽古まわしはもう、とうに捨てていた。また買う日がやってきた。通算8場所の十両では、新十両の13年春場所でしか勝ち越していない。「十両から落ちてばかりなので、しっかり定着して、そして上を目指して頑張りたい」と誓った。