新大関栃ノ心(30=春日野)が誕生した。日本相撲協会は30日、東京・両国国技館で名古屋場所(7月8日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議と臨時理事会を開き、栃ノ心の大関昇進を満場一致で承認。栃ノ心は伝達式で「親方の教えを守り、力士の手本となるように稽古に精進します」。師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)への感謝を織り込む異例の口上で、決意を表現した。

 協会の使者、出羽海理事(元幕内小城ノ花)と大鳴戸審判委員(元大関出島)を前に、栃ノ心が頭を下げた。「親方の教えを守り、力士の手本となるように稽古に精進します」。春日野部屋として、62年夏の栃ノ海、栃光のダブル昇進以来となる56年ぶりの大関誕生。当時の床柱、掛け軸などを持ち込み、写真などを参考に極力、歴史を“再現”した伝達式で、異例の口上が際立った。

 文言に「親方」の2文字を入れた。「自分の気持ちが言いたかった」。故郷ジョージアから17歳で入門。相撲界どころか、日本語も全然わからない自分を導いてくれた感謝の思い。最初は反対し、折れた師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)は照れくさそうだ。2人で話して決めた中身。多くのキーワードを出し、日本語が苦手な栃ノ心が理解していない言葉を削除した。「言いたいことあるんです」とこだわったのが「親方」、そして「稽古」だ。

 同親方は「稽古に稽古を重ねてってことはなかなか言えないけど、栃ノ心はまさに稽古で上がってきた力士。ピッタリな言葉」と喜び、口上の出来に「最高だよ」と満点を与えた。

 初場所の初優勝から、とんとん拍子の昇進劇。真価はこれから問われる。同親方は「協会の看板の1人になる。さらに頑丈な体を作って、常に優勝戦線に残れる力士になって欲しい」と激励した。当の栃ノ心に浮かれた様子はない。「稽古に精進して、強い体を作って、力強い相撲をとりたい」-。今後は弟ラシャさんが7日に行う結婚式出席のため、ジョージアに1週間ほど帰国。再来日後に稽古を本格化させる。名古屋場所の目標は「まず2ケタ勝ちたい」と控えめに掲げた。マイペースを崩さず、怪力大関が、熱い7月場所に突入する。【加藤裕一】