東前頭2枚目勢(31=伊勢ノ海)が横綱鶴竜から金星を挙げた。白鵬休場により、急きょ結びとなった一番で、身長194センチの巨体をぶつけるように一気に押し出した。金星は昨年名古屋場所で稀勢の里から奪って以来5個目だが、今場所前に女子プロゴルファー比嘉真美子(24)との婚約を公表しており、角界屈指の男前が土俵内外で会心の“W金星”だ。4戦全勝は新大関栃ノ心、関脇御嶽海の2人だけとなった。

 大歓声の中、座布団が舞う。白鵬休場で結びとなった一番。勢が勝ち名乗りを受けた。懸賞を右手で力強くつかむ。「忘れられへんな~、押し切った感触…。座布団、久しぶりに飛んでたし」。横綱鶴竜を一気に押し出した。力強い踏み込みで前に出て、何もさせない。昨年名古屋場所5日目の稀勢の里戦以来、1年ぶり5個目の金星。「横綱相手にああいう相撲が取れたら自信になります」。男前な取り口に、きっとフィアンセもシビれたはずだ。

 今場所前も“金星”があった。女子プロゴルファー比嘉との婚約を明かした。15年夏場所で出会い、交際1年の昨夏に「僕だけの“マミちゃん”になってください」と真っ向勝負でハートを射止めた。当然、今場所中も連絡を取り合っているはずだが「企業秘密です」とけむに巻き「今はもう場所も始まっているし、相撲のことしか考えられませんから」。

 比嘉は今季賞金ランク4位のトッププロ。大事に思うからこそ、公私は分けている。勢は「力が入りすぎると、ヘッドが走らんでしょ?」と相撲をスイングにたとえるほどのゴルフ好きだ。しかし、1度も一緒にプレーしたことがない。「練習に付き合って」と言われ、ショット練習を見守ったことがあるだけだ。

 「お互いに頑張れば、お互いに刺激になる。うん。いいライバルですよ」。比嘉は8月2日開幕の海外メジャー・全英リコー女子オープンに出場する。「僕は毎場所通り、15日間相撲を取りきる。それだけです」。自分の、ファンの、彼女のために勢は土俵に全力を注ぐ。【加藤裕一】