13場所ぶりの関取復帰場所で白星スタートを切った東十両13枚目の豊ノ島(35=時津風)が、この日も寄り切りで白星を挙げ連勝と好発進した。

同12枚目のモンゴル出身で、腕力には定評がある水戸龍(24=錦戸)と対戦。立ち合いから踏み込みも十分に当たると、左をさっと差した。さらに右も巻き替えようとしたが、これは失敗。すぐに肩すかしで体勢を崩し、再び距離を置いてからの突き押しから、一瞬のスキを見逃さずにサッと得意の2本を差した。豊ノ島の代名詞ともいえる、得意のもろ差し。逆に両腕もきめられる形になったが、192キロと腰の重い水戸龍を、腰をうまく使いながら上体を徐々に浮かせ、反撃の体勢を作らせないまま盤石の寄りで攻めきった。

体重の重い相手に、どう崩すか-。幕下の2年間で対戦相手にほとんどいなかっただけに、そんな相撲はなかなか取れなかった。ただ長年、関取として相撲を取っていただけに、それは体が覚えていた。「まわしを取って腰をグッと下に入れたら、体重差ある程度はカバーできるというか、重さも感じなくなるもんです。そのへんは長年やってると、コツというのは何となくあるんですよね」。

スキを逃さず2本を差し込んだシーンも「狙ってズラして入れる。自分らしい相撲だった」と言う。プライドはもう一つ。その代名詞とも言えるもろ差しで負けられない。「2本入ったんでね。いくらケガで(幕下まで)下がったとはいえ、2本入ったら、そう簡単に負けられないから」。この日も家族が館内で応援。「女の子の声で『トヨノシマ』の声が聞こえてね。勝手に娘の声だと思い込んでいた」と、目には入らなかった長女希歩ちゃんの存在も力に変えての白星だった。