やっぱり主役は、白鵬(33=宮城野)だ-。鶴竜が休場を決め、1人横綱となり、御嶽海に土がつき、先場所優勝の貴景勝が2敗目を喫した日に、平幕の正代を寄り切りで下し、しっかりと全勝を守った。「締めないといけない、引っ張らなきゃいけない。その2つの気持ち」。元横綱稀勢の里の引退で揺れた序盤戦を終え、今場所1番の内容で中盤戦へ。全勝は平幕の阿武咲と2人だけだ。

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6日目にして、白鵬のエンジンに火が入った。立ち合いから、左上手でまわしをとった。右が差せないと見るや一瞬体をずらし、タイミングよく差し込んだ。もう万全。腰を落とし慎重に、だがもたつかず、正代を寄り切った。

完璧な6勝目。「正代とはいつも稽古してるし、当たってきますからね」。2日目は栃煌山に背後を取られ、3日目は逸ノ城の重みに、4、5日目は北勝富士、錦木の若い圧力に苦しんだ。綱渡りの序盤5戦がウソのようだ。

時代の潮目は感じている。この日の朝稽古後「こういった場所は初めてじゃないかな」ともらした。しのぎを削った稀勢の里が土俵を去り、鶴竜が休場。実に24場所目の1人横綱となった。一方で若い力が押し寄せる。5日目を終えた段階で、小結御嶽海が5連勝。先場所優勝の関脇貴景勝、自己最高位東前頭2枚目の錦木がともに4勝1敗。「気になる若手」を尋ねられて「全員。みんな調子いいからね」と苦笑いした。ただ、こうも言った。「人間って若い人に接していくと、自分もそう(若く)なるんだってね」-。

一転、この日は土俵が荒れた。目前で若い力が失速するのに合わせたように、白鵬はギアを上げた。「締めないといけないってことと、引っ張っていかなきゃってこと。その2つの気持ちになった」。少々のことで揺るがない。揺らいでは、41度も優勝できない。2019年も、平成が終わろうとも、白鵬は白鵬だ。【加藤裕一】