大相撲11月場所限りで現役を引退した元小結臥牙丸(33=木瀬)が17日、東京・両国国技館でオンラインでの引退会見に臨んだ。15年の力士生活に区切りをつけ「日本に来たときに一言も日本語がしゃべれなくて、何も分からない人生が始まって、相撲から人生まで学んだので楽しい人生でした」と振り返った。

ジョージア出身で05年九州場所で初土俵を踏み、12年初場所で新三役に昇進。近年は両膝の負傷などに苦しみ、今年春場所から3場所連続全休で序二段まで番付を落としていた。両膝の回復が思わしくなかったことが引退の理由で「手術も考えたけど、手術したら相撲が取れないと先生からのいろいろな判断で引退を決めました」という。

思い出の一番は11年秋場所11日目、大関初挑戦となった把瑠都戦。「勝てる自信が1%もなかったのでうれしかった」。稽古場で圧倒されていた相手から白星を挙げた。

同じジョージア出身の栃ノ心には前日16日夜に引退を報告した。「大きな存在で家族のような存在。栃ノ心は部屋から近くて心強かった。まだ彼は土俵に上がって頑張っているので、応援したいと思います」。18年夏場所後の大関昇進時は自分のことのように喜んだ。

部屋では“師匠代行”の存在感を発揮していたという。会見に同席した師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)は「面倒見も良くて、下の力士にも教え方がうまい。私も稽古場にいないときは、臥牙丸がずっと面倒を見てくれた。頼っていた。今の木瀬部屋があるのは臥牙丸のおかげ」と絶賛。臥牙丸も「うちの師匠がお父さんと思って、こんな人間になりたい、いい弟子になりたいと思って頑張ってきた。神様にありがたい気持ちでいっぱいです」と感謝した。

第2の人生は未定だが、ジョージアに戻らず日本に残って生活する。「自分の第2の故郷。日本の国民のみなさんに、応援してくれた方の側にいられるようにしたい。相撲しか分からない人生なので、できれば相撲を教えたりとか、相撲の大事さを世界にも教えたいと思う。アマチュア(相撲)でも勉強したことは世界に教えたいと思います」。角界での経験を世の中に還元する。