元三段目白海竜の森本竜司さん(28)は、19年初場所で引退するまでの約7年間にわたって横綱白鵬の付け人を務めた。「本当に研究熱心でしたし、負けず嫌いな方でした」と白鵬の人柄を口にする。

稽古後に弟弟子らと遊ぶのが好きだった白鵬。トランプや手押し相撲、宿舎外に卓球台があった九州場所では卓球などに興じた。もちろん遊びの場だが、負ければ「もう一丁」と弟弟子らに再戦をお願い。「よくムキになっていました。遊びでも勝負事となれば誰よりも本気。どうやったら勝てるかを必死に考えていました」と懐かしそうに振り返った。

移動の際の車中、部屋でトレーナーからマッサージを受けている時など、白鵬は四六時中動画を見ていたという。大鵬や千代の富士、北の湖ら横綱の取組動画を繰り返し見る他、柔道やレスリングの動画も見て、取り口のヒントを探していた。本場所中の取組後は、必ず自身の取組を確認。部屋に戻った後も食事をしながら何度も確認した。弟弟子らの取組も動画で確認し、後にアドバイスをくれることもしばしばあったという。「誰よりも相撲と向き合っていた。本当にすごいこと」と話した。

思いやりのある横綱でもあった。森本さんの誕生日の6月10日になると「メールをくれます。しかも12時ぴったりに」と日付が変わった瞬間に祝福メールが送られてくる。また、自身が三段目に昇進した時には「俺が作ってやる、と言って羽織付きの着物をくれました。三段目が着るようなものではない高級な着物です」と贈り物が届いた。「本当に後輩思いでした。いろいろ気にかけてもらいました」と感謝した。

引退は報道で知ったという。いてもたってもいられず「お疲れさまでした」とメール。すると「ありがとう。また頑張ります」と返事があった。「批判も多かったのに『また頑張ります』と言えるのがすごい。自分ならくじけている。絶対にいい親方になります」と期待した。【佐々木隆史】