連日、いい相撲を取り続けている若隆景が最高の相撲を取りました。全勝の高安に土をつけた20秒足らずの一番の中に、うまさが光るいくつものポイントがありました。まず当たって土俵中央での押し合いの時、左から肩透かしに行き、すぐにやめました。あのまま打ち切っていたら高安は小手に巻くように、きめながら出て行ったはずです。そこを瞬時にやめて攻め直した。

最近、小兵力士で攻め方を途中で変えられる人はいません。その後、若隆景は左から得意のおっつけに出ました。これで高安の高い腰がさらに高くなった。2本が入り、これ幸いと攻め立てたいところですが、肩をすぐに入れず両肘を使って下から下から高安を押し上げ自分の腰を下げました。劣勢に立たされた高安からすれば、出来るだけ長い相撲に持ち込み若隆景の疲れを待つなり引きを待っていたんでしょうが、これでは何も出来ません。

持久戦に持ち込みたい高安の心理は若隆景も理解していたはずで、それをさせなかったのは力強さで高安を上回っているからです。相撲の力強さというのは、体の大小や体重の軽重ではないことを今場所の若隆景は実証しています。

白星を2ケタに乗せ大関とりの起点も作りました。残りの土俵で優勝へのプレッシャーを味わうでしょうが、それを経験することが来場所以降の成長につながります。どんぐりの背比べでない、本物の「荒れる春場所」の主役候補として最後まで土俵を沸かせてほしいですね。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)