日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審)の定例会合が、大相撲秋場所千秋楽から一夜明けた26日、東京・両国国技館で開かれた。

7月の名古屋場所後の会合は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け中止されたため、5月の夏場所後以来の開催となった。高村正彦委員長(80)が報道陣の代表取材に応じ、各委員の声も含め春場所を総括し、今後への期待感などを語った。

横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)の途中休場については「たいへん残念なこと。いくら完成形に近い相撲を取る照ノ富士でも、膝が極端に悪化したら相撲は取れない」と語り、今後については「ジックリ治してほしい。祈るような気持ちで(復帰を)期待している」とし、仮に11月の九州場所を休場しても、横審としては治すことに専念し、問題視しないことを明かした。

10勝を挙げた貴景勝(26=常盤山)と、ともに4勝11敗と無残な成績に終わった正代(30=時津風)、御嶽海(29=出羽海)の3大関については「10勝を挙げた貴景勝を含めて、やはりいろいろな方から技術的な課題、精神的問題を指摘され、私どももやむを得ないと。大関の座を去る御嶽海を含め、より一層、奮起してほしいということに尽きる」と苦言を呈した。また最近の大関陣の不振ぶりから一部委員の声として、大負けして陥落するのが関脇でなく小結に落とした方がいいのではないか、という意見があったという。もちろん横審として提言すべき問題ではなく、意見としてまとまったものではないが同委員長は「ファン代表として(協会に)お伝えした。今の制度でも、それなりにいいところもある。その制度が悪いと言われないように奮起していただくことが大切」とまとめた。

千秋楽で優勝を争った両ベテラン力士についても言及。「玉鷲と高安、それぞれがそれぞれ自分の本領を発揮したと思うが、この相撲については玉鷲に一日の長があった。末永くというと違和感を感じる方もいるが、あの取り口を見れば末永くライバルとしてお互い横綱を目指して欲しいと思う」と称賛した。

また三賞を受賞した若隆景(27=荒汐)、翔猿(30=追手風)についても期待。「技能賞の若隆景は単なる技能ではなく、あの足腰を見れば(元横綱)初代若乃花をほうふつとさせるものを持っている」と“土俵の鬼”とだぶらせた。その上で今場所は初日から3連敗スタートだったことを踏まえ「3連敗しながら大変な成績を上げて素晴らしいともいえるし、なぜ3連敗したのかともいえる。そういう(前半不振の)傾向があるので、そこをしっかり本人が考えて序盤戦も強い若隆景になれば将来、横綱を目指せる」と期待した。翔猿についても「ちょっと前まではサーカス相撲でお客さんを喜ばしていたが、このところ強豪力士として将来を嘱望される力士になった。より一層の奮闘をしていただきたい」と、新三役が有望な大相撲九州場所以降の活躍にも期待した。