人口3万人余りの街から幕内力士が出たことに、地元関係者は色めき立っている。大相撲九州場所(13日初日、福岡国際センター)で新入幕を果たす熱海富士(20=伊勢ケ浜)は、しこ名の通り静岡・熱海市出身だ。静岡・飛龍高を卒業して初土俵から所要12場所での入幕は、年6場所制となった1958年以降初土俵(幕下付け出しを除く)で小錦、朝青龍らと並ぶ8位のスピード昇進。今年3月に発足した地元後援会もがぜん応援に力が入る。

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入門からわずか2年で新入幕を果たした。人懐っこい笑顔と「サク」(本名の武井朔太郎から)の愛称で親しまれる20歳のスピード出世に、地元後援関係者は驚きを隠さない。「関取になるのも2、3年かかるかなと思っていたんで」。母の奈緒さんの予想も大きく上回る成長ぶりだった。新入幕を決めた後には、愛息に電話で「ここがゴールじゃない」とさらなる奮起を促した。「一番下から全力で向かっていき、けがなく場所を終えてほしい」と願った。

今月上旬、熱海市内では奈緒さんら後援会の会員が番付表やカレンダーの送付作業に追われていた。今年3月に発足した同後援会は市長や商工会議所会長、観光協会町らも名を連ね、会員数は日を追うごとに増加。市役所では千秋楽の27日まで写真パネルの展示や懸垂幕を置く。幕内で初めて相撲を取る郷土力士の活躍を、地域一体で応援する様子がうかがえた。

熱海富士は場所前の取材で、「熱海のみなさんには本当に感謝しかない。もっと頑張って熱海の名前が広がれば」と言った。昨年7月に地元を襲った大規模土石流後は、より一層故郷への思いが強くなった。「自分が熱海の代表として出ているので、下手な相撲は取っていられない」と稽古に励む日々。熱海から大海原を出たばかりの20歳の活躍に目が離せない。【平山連】