西幕下2枚目の獅司(26=雷)が、4連勝で勝ち越しを決めた。他の力士の成績などにもよるが、来場所はウクライナ出身として初めて新十両に昇進する権利を得た。立ち合いから突いて出て、勇磨に1度は押し返された。さらに、引きに乗じて土俵際まで押し込まれる場面もあったが、193センチ、175キロの体格を生かした圧力で前進。最後は寄り切った。

取組後は「うれしいです! 来場所はたぶん、関取に上がります!」と、声を弾ませた。日本語はまだ、たどたどしいとはいえ、現在の調子も加味して、さらに白星を重ねることを確信したように話した。「緊張しました。(はたきは)1回だけあった。でも前に出て、最後はまわしを取って(勝って)うれしい」と続け、笑顔を見せた。

師匠の雷親方(元小結垣添)からは「前に出て、しっかりと立ち合いをすれば大丈夫」との言葉をもらっており、後押しになった。場内の声援も、他の幕下力士よりも明らかに大きく「うれしいです。ウクライナ出身だからかもしれないです」と、応援に感謝した。

左肘のテーピングについては「大丈夫」の後に「ちょっと心配」、さらに「痛くないです」と、二転三転した。ただ、終始笑顔で、取組の間は気にならない様子。無我夢中で取り続けている。

自身の取組動画は、母国に残る両親に送っている。勝ち越しに王手をかけた、三番相撲の動画も送り「おめでとう」と、両親からメッセージも届いた。両親の母国での生活について、電気や水道、ガスなどのインフラの状況は「大丈夫です」と、無事に生活を送っているという。ただ、この日、ウクライナのゼレンスキー大統領が来日することについては「ちょっと…。難しい話、ダメ」と、政治色が少しでも入るようなコメントは控えている。さまざまなものを背負いながら、日々、土俵に立っている。

今後、白星を重ねれば重ねるごとに、周囲の成績に関係なく、新十両昇進が近づく。「関取になりたい?」の質問には「なりたいです!」。「優勝したい?」の質問には「頑張ります!」。自身の活躍で、両親に、さらには母国に明るいニュースを届けるつもりだ。

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