2メートル超の「規格外」力士が、優勝争いのキーマンに浮上してきた。

入幕2場所目の東前頭11枚目・北青鵬(21=宮城野)が、前日に横綱照ノ富士から初金星の明生を、右上手だけで攻略し勝ち越しを決めた。現役関取最長身、204センチはスケールのでかい相撲で優勝争いに食い込み、11日目は関脇若元春との対戦が組まれた。横綱照ノ富士、幕内に復帰の東前頭14枚目・朝乃山が1敗を守った。

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誰もが見上げる長身力士は涼しい顔で言った。

「相撲の概念をぶっ壊します。勝つために、自分の相撲をとるために。それが自然に出たと思う」

まだ21歳、入幕2場所目の北青鵬は、自らの生きる道を理解し達観していた。生来に得た最大の武器。長身と長い手足だけを生かした相撲で、優勝争いに食い込んできた。

立ち合いからの主導権は明生にあった。押し込まれたが、北青鵬は肩越しに取った右上手だけで安心していた。「(右上手は)狙って取れたんで残せた。(余裕は)全然ありました」。

見た目には完全に押し込まれていた。左足つま先を徳俵に残し、ギリギリの戦いと思いきや、北青鵬は平然だった。観客席から湧き上がる悲鳴も心地よい。「いい感じで盛り上げられていると思う」。勝負を楽しむ余裕さえあった。

モンゴル生まれの道産子。初めて番付に載った20年名古屋場所から序ノ口、序二段、三段目と全勝優勝で番付を駆け上がった。21年名古屋場所で幕下優勝を飾り、新十両に昇進も粗削りの相撲で右膝を痛めて再び幕下に番付を落とした。それでも相撲は変えない。復帰した昨年初場所から、これで9場所連続の勝ち越しを決めた。元横綱白鵬の師匠、宮城野親方からも「何も言われません」という。

11日目は初の三役、関脇若元春との対戦が組まれた。「何も意識ないです。1日一番としか考えない」。横綱、大関経験者の実力を1差で追う残り5日。2メートル超の“大物”が、存在感を高めていく。【実藤健一】

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